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有識者会議の越権
高森明勅
高森明勅 看板が気の毒な有識者会議で、退位後の天皇は一切ご公務に関わらない方針で一致した、との報道。 相変わらず無知を晒している。 国事行為は憲法上、天皇“だけ”が行うことが出来る(天皇からの委任を前提に皇嗣などによる臨時代行は可能)。だから始めから議論の対象にならない。 また公的行為(象徴行為)も、天皇“こそ”が行うべきだというのが、そもそもこの度の天皇陛下のご譲位...
昭和天皇は皇室典範改正の発議権をご希望
高森明勅
高森明勅 現在の皇室典範は憲法と同じく占領下に制定された。 その際、昭和天皇から「皇室典範改正の発議権を留保できないか」とご下問があった(『芦田均日記』)。 国民生活には関係せず、専ら皇室だけを律する典範について、皇室が一切関与出来ないのは余りにも理不尽、とお考えだったのだろう。 その理不尽さは、この度の天皇陛下のご譲位を巡る動きの中で、改めて鮮明に浮かび上がった。 ...
お気持ちより皇室制度の維持?
高森明勅
高森明勅 昨年8月8日以降もご譲位に公然と反対した者が何人かいた。その事実を私らは忘れるべきではない。 あからさまに、こう言い放っていたのだ。 「陛下の御意向はあるのですが、私は皇室制度をいかに維持していくのかということを最優先に考えるべきだと思います」(八木秀次氏)と。自分が何を言っているか理解できているのか。 陛下がお嫌でも、俺たち国民の為に皇室制度を維持しなけれ...
あのとき陛下にお声を…
高森明勅
高森明勅 ノンフィクション作家で『魂でもいいから、そばにいて 3・11後の霊体験を聞く』を上梓した奥野修司氏。東日本大震災で4人の家族を亡くされたある女性が、天皇皇后両陛下のお見舞いを振り返って、こう語られたと雑誌で紹介している。 「あのとき陛下にお声をかけてもらえなかったら今頃私たちはこの世にいなかったでしょうね。陛下が来られるまで、私たちは誰からも声をかけてもらえ...
福岡との縁
高森明勅
高森明勅 4月9日は福岡で初の九州ゴー宣道場。私が福岡に最初に講演でお邪魔したのは、昭和から平成に移ってまだ間もない頃。私が初めて本を出したのが平成2年2月。 小さな出版社から『天皇と民の大嘗祭』という著書を刊行した。 幸い好評を得て、たちまち3刷まで行った。これをきっかけに各地から講演の依頼があった。福岡もそうした流れで呼ばれたのではなかったか。地元の青年たちが声を...
上皇后?
高森明勅
高森明勅 天皇陛下がご譲位された後の皇后陛下の称号は「上皇后(じょうこうごう)」という案があるという。 皇室典範には、「皇太后(こうたいごう)」という古代以来の伝統ある称号が既に存在する。それとの整合性はどうすのか。 皇太后は「崩御(ほうぎょ)された天皇の皇后」という“イメージ”があるから避ける、とか。イメージで議論されても困る。 前近代の例を振り返れば、別に崩御され...
不思議だった「譲位」否定論
高森明勅
高森明勅 今となっては不思議だ。 しかし、「譲位を可能にすると世襲制と矛盾する」という論理が確かにあった。占領下に今の皇室典範の作成に携わった、法制局次長の井手成三や宮内省文書課長の高尾亮一らの主張だ。これは当時、昭和天皇の戦争責任を問う声があり、退位論まで取り沙汰された特殊な事情を勘案すべきだろう。無理な論理でも、退位の可能性を一切、制度上排除する、政治的な必要性に...
「秋篠宮」継続?
高森明勅
高森明勅 時事通信がこんなニュースを配信(3月31日)。 「政府は天皇陛下の退位に関し、皇太子さまが次の天皇に即位した後も弟の秋篠宮さまの称号を変更せず、『秋篠宮』のままとすることで調整に入った。…称号を変えない場合でも、皇位継承順位1位の皇族として対外的には『皇太子』と表記し、待遇も現在の皇太子ご一家と同等とする方向だ」と。 興味深い。前にも述べたように、皇室典範は...
平成の輝きを曇らせてはならない
高森明勅
高森明勅 平成2年11月12日。 天皇陛下は「即位礼正殿の儀」を終えられた後、皇居から当時お住まいの赤坂御所まで「祝賀御列(おんれつ)の儀」を行われた(午後3時半から4時)。明るい日差しの中、天皇皇后両陛下が乗られたオープンカーの前後に、白バイやサイドカーを含め44台の車列を連ねた祝賀パレードだ。4.7キロの沿道には11万6千8百人(警視庁調べ)の国民が詰めかけた。 ...
戦いの構図
高森明勅
高森明勅 昨年7月13日以来、1つの極めて重大な「戦い」が始まった。言う迄もなく、天皇陛下のご譲位を巡る戦いだ。その戦いは今も続いている。 それは最初、「皇室典範の改正か、特例法か」の対立、という形を取った。 やがて「恒久制度化か、例外的措置か」に重点を移した。 今、最も切実に問われているのは、この対立。 だがその背景には、一貫してより根底的な対立が潜んでいる。天皇陛...
「戦い」はこれから
高森明勅
高森明勅 天皇陛下のご譲位は何とか実現できそうだ。 「違憲」の疑いも一先ず回避し得るだろう。 しかし、肝心の「退位要件」に不安を抱える。 政府がどんな法案を作るか。 国会できちんと“恒久ルール化”という歯止めをかけられるか。とりわけ皇室会議の位置付けはどうなるか。 この点に関して、先日の倉持麟太郎氏の東京新聞(3月21日付)での指摘は、重要だ。 「国会がとりまとめた見...
小川榮太郎氏の「終身在位」批判
高森明勅
高森明勅 『月刊Hanada』5月号に文芸評論家の小川榮太郎氏の文章が載っている。 題して「平川祐弘氏に反論する 譲位の制度化がなぜ必要なのか」。同誌先月号に掲載された平川氏の“終身在位”論への批判だ。興味深い内容なので、その一部を紹介する。 「祈りや国民への寄り添いという『天皇の務め』を大切になさることは、『機能』や『能力』の重視ではないでしょう」 「極論すれば、皇...
「皇太子」か、「皇太弟」か
高森明勅
高森明勅 3月22日、何だか看板が気の毒な有識者会議で4人の外部「専門家」を呼んでヒアリング。 老年医学の専門家が「老化に伴う自立度や様々な機能の変化は、個人差があって多様」と指摘されたのは、私が素人考えで思っていた通りで、心強い。他の3人が、ご譲位後の称号は「太上天皇」とされたのも、当然のことながら結構だった。 しかし秋篠宮殿下の称号について、3人のうち2人が「皇太...
「上皇」は略称
高森明勅
高森明勅 何だか気の毒。 有識者会議の名前のこと。 今でも「天皇の公務の負担軽減等に関する…」となっている。それが凄くミジメに見える。 「まだあったのか」と驚いた人もいるだろう。 3月22日、久々に再開。したと思ったら早速、無知を晒している。 メンバーの1人から「(太上天皇だと新天皇と)『天皇』の名称が重なるのはどうかという意見は当然出てくる。『上皇』の方が分かりやす...
敬宮殿下の「平和」論
高森明勅
高森明勅 敬宮殿下、学習院女子中等科をめでたくご卒業。おめでとうございます。 心からお祝い申し上げます。殿下は卒業記念文集に「世界の平和を願って」というご文章をお寄せになった。 平和論だ。ここに謹んでその一部をご紹介申し上げる。 「平和を願わない人はいない。だから、私たちは度々『平和』『平和』と口に出して言う。 しかし、世界の平和の実現は容易ではない。今でも世界の各地...
東京新聞ほか
高森明勅
高森明勅 東京新聞(3月21日付)の「退位こう考える」コーナーの倉持弁護士「国会見解は『官僚文学』」拝読。まさに正論。 特に「見解がまとまった以上、特例法による退位が一代限りではなく、事実上の制度として政府に認めさせることを目標にするべきだろう」というのは大切な指摘。 うっかり忘れていたが、私も同紙3月14日付の同コーナーに談話「特例法はルールなき先例化」を寄せていた...
馬鹿の三段論法
高森明勅
高森明勅 安倍政権は「病的」に特例法に固執している。その背景にあるのは、どうやら「馬鹿の三段論法」。こんな具合だ。 (1)退位に天皇のご意思が介在すると国政権能に当たり、憲法に違反する。 (2)しかし、退位の恒久的な要件を定めるのに、天皇の意思を介在させないのは不合理。 (3)よって、恒久的な退位の要件を定められない以上、特例法で対処するしかない。 しかし、その時々の...
ご譲位「議論のとりまとめ」のポイント
高森明勅
高森明勅 3月17日の与野党全体会議で決定した「天皇の退位等についての立法府の対応」に関する衆参両院正副議長による議論のとりまとめ。その中でいくつか注目すべき点を紹介する。 「昨年8月8日の今上天皇の『お言葉』を重く受け止めている」 「象徴天皇の在り方を今後とも堅持していく上で、安定的な皇位継承が必要であり、政府においては、そのための方策について速やかに検討を加えるべ...
大御心か、権力か
高森明勅
高森明勅 昨年8月8日の天皇陛下の「おことば」は譲位の恒久制度化を望んでおられた。 それは文脈上、疑いない。圧倒的多数の国民もそれを受け入れている。 客観的にも、高齢化の社会的趨勢の中で、天皇の能動的な象徴性を担保するには、譲位制は不可欠。にも拘らず、安倍首相は何故か一代限りの例外的譲位に「病的」に固執した。 馬鹿なのか、“敢えて”陛下のお気持ちに背こうとしたのか。そ...
共産党の正体
高森明勅
高森明勅 天皇陛下のご譲位を巡り与野党が合意可能そうなラインを、議長らが国会見解案という形でまとめ、各党に打診した。それを共産党が3点、批判していた。 1、見解案に「昨年8月8日の今上天皇の『おことば』を重く受け止め」とあるのは、国会が天皇の「おことばを重く受け止め」ると国政権能に関わり、憲法に抵触するから駄目。 2、「お気持ちが広く国民に理解され」と天皇の“意思”に...