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ためらひつつ、さあれども行く
高森明勅
高森明勅 年頭、昨年の天皇陛下の御製、皇后陛下の御歌が発表されている。その中から。 両陛下は昨年5月、前月の地震で大きな被害があった熊本を親しくお見舞いになった。その時の御製。 幼子の静かに持ち来(こ)し折り紙のゆりの花手に避難所を出づ両陛下は、避難所になっていた益城中央小学校の体育館をお見舞いになった。その折、小学生の女児から色紙で折ったユリの花束を受け取られている...
「おことば」の憲法学
高森明勅
高森明勅 原武史氏がこんなことを述べている。 「今回生前退位が実現すれば、それはどう取り繕っても天皇の『おことば』がきっかけとなっており…憲法4条に抵触すると思います」と。 原氏は元日経の記者で、専攻は日本政治思想史。 憲法学はズブの素人だ。でも百地章氏や八木秀次氏など、「保守」系の憲法学者も似たり寄ったりなことを言っている。 その一方、奇妙な逆転現象が起きているのか...
三浦瑠麗氏と皇室
高森明勅
高森明勅 国際政治学者の三浦瑠麗氏の業績は、失礼ながら殆ど知らない。これまで何度か、議論の場でご一緒しただけ。 だが、皇室への自然な敬意の“淡い気配”を、そこはかとなく感じていた。 先頃、その理由が分かった。三浦氏の高祖母が明治天皇の乳母の1人で、その子の曾祖父は明治天皇の乳(ち)兄弟だった。同氏の母方の祖母は、その事実を誇りにし、天皇に親近感があったらしい。 氏は幼...
平成の国民として
高森明勅
高森明勅 昨年8月8日の「おことば」の中に次のような一節があった。 「天皇として大切な、国民を思い、国民のために祈るという務めを、人々への深い信頼と敬愛をもってなし得たことは、幸せなことでした」 畏れ多いことに、平成の国民への「深い信頼と敬愛」を述べて下さったのだ。 だが今、政府は特例法による一代限りの譲位の押し付けという形で、公然と天皇陛下のお気持ちを踏みにじろうと...
偶然の首相
高森明勅
高森明勅 安倍晋三氏が再び首相に就任したのは偶然だった。その経緯を忘れた人も多いのではないか。 今から5年前。平成24年のこと。 まだ自民党が野党だった頃の党総裁選。 当時、民主党政権は3代目の野田佳彦内閣だった。消費税引き上げの方針を打ち出して支持率は低迷。次の衆院選では自民党の政権復帰の可能性が高いと見られていた。だから、この時の総裁選は次期首相選びに直結する意味...
もしも鳩山・菅だったら?
高森明勅
高森明勅 安倍外交は連戦連敗。 どうしてこれほど負け続けるのか? プーチンを安倍首相の郷里、山口にわざわざ呼んで、鳴り物入りの首脳会談。 成果はゼロどころか、絵に描いたような「食い逃げ」。 と言うより盛大な食い逃げの「開幕」! これほど完膚なき迄の外交敗北は珍しい。トランプの自宅までノコノコ出向いて、「信頼できる」とヨイショした返礼がTPP離脱表明。 これも完敗だ。日...
健忘症?
高森明勅
高森明勅 安倍首相の再登場を歓迎した「保守的」「愛国的」な国民たち。彼らはあの時、安倍氏に何を期待したのか。その期待は叶えられたのか。 拉致問題は今、どうなっている? 尖閣諸島の危機は? 首相の靖国神社参拝は? 慰安婦問題は? 歴史認識の問題は? 北方領土問題は? はたまた憲法改正は?何か具体的な前進があったのか? 或いは、前進への展望だけでも開けたのか? 例えば慰安...
シンプルな選択
高森明勅
高森明勅 日本人は皇室が今後も存続して貰いたいと願うのか、否か。もし存続を願うのであれば、皇室の方々がその「お務め」に取り組んで下さることに「幸せ」を感じて戴ける環境を、しっかり築かなければならない。 にも拘らず、皇室への敬意も感謝も信頼感もなく、一切の能動性、主体性を否定して法的に“縛る”ことしか考えないのが、安倍政権が企てている特例法による一代限りのご譲位だ。愚か...
参賀
高森明勅
高森明勅 晴天の下、新年の一般参賀。 事情があり、例年より遅めの午後1時半のお出ましでの参賀に。 宮殿前の広場(東庭)が人で一杯。 お出ましを5回に減らしている中で、今年は9万6700人の人々が詰めかけたようだ。入場規制も行われたという。 平成に入って2番目の多さとか。お健やかそうで穏やかな天皇陛下の御声。例年はそのまま靖国神社に向かう。今年は銀座まで歩いて丸の内TO...
天下の諤々も…
高森明勅
高森明勅 新年明けましておめでとうございます。 しかし、新年早々ご譲位を巡りふざけたニュース。 つい、頭山満が来島恒喜の柩の前で捧げた、弔詞の一節を想起してしまう。
平成からその次へ
高森明勅
高森明勅 平成28年が過ぎ去ろうとしている。 「平成」という元号も恐らく30年迄。 この年、ご譲位による慶びの改元を迎えるはず。 しかしその為には、特例法による一代限りのご譲位という、安倍政権の悪辣な企みを、何としても阻止しなければならない。 来年こそ正念場。微力を尽くしたい。 皆さん佳いお年を!
高尾亮一批判
高森明勅
高森明勅 ご譲位を巡る政府の対応の理論的バックボーンは恐らく高尾亮一旧宮内省文書課長のロジック。 彼の言い分はこうだ。 「(自由意思による退位は自由意思による不就位に繋がり)血統による継承において不就位の自由を規定したならば、その確認のために空位又は不安定なる摂位(君主に代わってその位に就くこと)という事実の起こるのを防止できず、万一継承資格者のすべてが就位を拒否する...
高尾亮一氏のロジックは旧時代の遺物
高森明勅
高森明勅 いつまで旧宮内省文書課長だった高尾亮一氏のロジックにしがみつくのか。 天皇の自由意思による退位を認めたら、自由意思による即位辞退も認めなければならず、そうなれば皇位の継承が不安定になる、という言い分。八木秀次氏などが得意げに振り回しているのを見かける。実は高尾氏の受け売り。 だが、社会の高齢化もなく、今上陛下の献身的なご努力による「国民と共にある」天皇像も未...
ブラックジョーク?
高森明勅
高森明勅 ある記者とこんなやり取りをした。 「先生、退位の要件に天皇の意思を入れたら、皇室会議がそれを押し返すなんて出来ますか?結局、天皇の恣意的な退位になってしまうのではないですか」 「陛下のご意向を押し返すというのは、望ましくはないけれど十分、出来ますよ」 「どうしてそう言い切れます?」 「だって、現に我々の目の前で、皇室会議より遥かに格下の有識者会議ごときが、陛...
映画「この世界の片隅に」は名作
高森明勅
高森明勅 先日、要件の合間を縫ってアニメーション映画「この世界の片隅に」を観た。 これは掛け値なしに名作。 近年、観てきた映画が、どれもチャチに思えてしまう。 最初、小さな規模で上映が始まり、じわじわ広がって、上映期間も延びている。 それも当然だろう。 派手さはない。人々を驚かせる仕掛けもない。 しかし、クスクス笑いの一方で、深い感銘がある。 こうの史代氏の原作マンガ...
「強制退位」以外は憲法違反?
高森明勅
高森明勅 いわゆる「生前退位」を巡る言説の馬鹿さ加減の底が見えない。果てしなく馬鹿げた言論が飛び交っている。 呆れたことに、退位の「要件」の1つに天皇ご自身の“意思”を加えるのは憲法違反、という批判まで飛び出す始末。例の第4条「天皇は…国政に関する権能を有しない」に違反するのではないか、と言うのだ。 どこまで歪(いびつ)な憲法解釈をしているのか。GHQより自虐的な戦後...
朝日新聞の取材
高森明勅
高森明勅 朝日新聞(12月28日付)に、「天皇退位への提言」の第5回(最終回)として「『ルールなき先例化』の危険」と題し、私の見解が取り上げられた。限られた字数の中に私が伝えたい要点がコンパクトに収められている。 担当したのは、優秀な女性記者。 で、その記事が載った12月28日、別件で同じ朝日新聞の取材を受けた。安倍首相の真珠湾訪問をどう見るか、という質問。複数の識者...
安倍首相の発言
高森明勅
高森明勅 安倍首相の発言。 「首相がもっと堂々と靖国参拝をできる環境をつくるため、これからも努力していきたい」(平成21年5月11日) 「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」(平成25年9月25日) 「移民政策と誤解されないように配慮しつつ…さらなる外国人材の活用の仕組みについても、検討を進めていただきたい」(平成26年4月4日) 「私は『立法府の長』」(...
『SAPIO』で「天皇」図書の紹介
高森明勅
高森明勅 新年(1月5日)発売の『SAPIO』2月号に「ニッポンの大問題〔戦争〕〔天皇〕〔憲法〕を考えるための最強ブックガイド全27冊」という企画。その中の「〔天皇〕 陛下の『おことば』の意味と皇位継承を考えるための10冊」を担当した。 膨大な関連書籍を読み返して、その中から10冊の本を選び、ごく限られた字数で解説する。僅か2ページの記事ながら、仕上げるのに随分と苦心...
内閣の助言と承認(2)
高森明勅
高森明勅 先に、天皇の公的行為についても「内閣の助言と承認」が必要と錯覚している憲法学者がいた事について、述べた。その時に、実際の内閣の助言と承認の具体的な形式を紹介した。これが一般には余り知られていなかったようだ。そんな中身だったのかと、驚いた人もいたらしい。 「助言と承認」は、“助言”と“承認”が(行為の前と後に)それぞれ別々に行われる、と思っていた人も多かったよ...