高森明勅

内閣の助言と承認(2)

高森明勅

2016年 12月 26日

先に、天皇の公的行為についても「内閣の助言と承認」が必要と
錯覚している憲法学者がいた事について、述べた。

その時に、実際の内閣の助言と承認の具体的な形式を紹介した。

これが一般には余り知られていなかったようだ。

そんな中身だったのかと、驚いた人もいたらしい。

「助言と承認」は、“助言”と“承認”が(行為の前と後に)それぞれ
別々に行われる、と思っていた人も多かったようだ。

普通の国語の使い方なら当然そうなる。

だが実態は違う。

両者は一体として行われている(昭和39年4月23日、
衆議院内閣
委員会での高辻正己内閣法制局次長の答弁)。

具体例を追加しておく。

法律上、天皇の認証を必要とする官吏(認証官)の任免のうち、
人事官の任命の「認証」(国事行為)
の為の助言と承認の書式を、
掲げておく。

「〇〇を人事官に任命するについて 
右謹んで認証を仰ぎます。
年 月 日
内閣総理大臣 氏名」
なお認証官の任命にあたっては、
天皇の御前で首相から官記を授け
られる「認証官任命式(認証式)
」が行われる(認証自体は国事行為
ながら、
式へのお出ましは公的行為)。

ちなみに、「助言と承認」というのは占領当局が拘った表現。

日本側は、天皇に非礼な表現を避ける為、「輔弼賛同」(内閣要綱)
とか「
補佐と同意」(内閣草案)という語を採用したかった。

しかし、GHQに拒否されたという経緯がある。

念のため。