公論イベントの前日、上京ついでに新橋演舞場で市川團十郎家の大歌舞伎を観てきた。
昨年は、博多座に團十郎が来たので、「暫(しばらく)」の鎌倉権五郎を見たのだけど、場内大歓声の大喝采だった。その際、私の隣に座っていたおばあさんは、別の演目の時はずっと寝ていたのに、鎌倉権五郎が見得を切った瞬間だけバッと覚醒して「うわあ、すごい、すごいねえええ!」と大興奮で手を叩いていた。
老婆を覚醒させる並々ならぬエネルギーに衝撃を受けたのもあって、「新春は團十郎を見たい」と思っていた。
期待どおり、終始、迫力があって、團十郎扮する獅子の毛振りも見れたし、舞台上が豪華で、元気があって、よかった。今回は、團十郎の息子・勸玄くんこと「市川新之助」、そして娘・麗禾ちゃんこと「市川ぼたん」も出演していた。
勸玄くんは、12歳になって、顔に赤い筋隈を入れ、たった一人で舞台に立ち、「矢の根五郎」という芝居をやりきっていた。ジャイアンのような若々しい乱暴さと、コミカルさがあって、とてもよかった。
驚いたのは、14歳の娘・市川ぼたんの役者ぶり。
「児雷也(じらいや)」というガマの妖術使いの芝居では、團十郎演じる児雷也の妹として主役を張り、親の仇である汚い金持ちを騙してこらしめるという役を演じていた。
「歌舞伎は男がやるもの」というのが当たり前だったから、通常なら、若い男子が女形として演じる役柄だろう。
ところが、市川ぼたん、舞台の上での堂々たる風情が凄い!
舞踏家として修練を積んでいるそうで、踊りがうまいし、なにより度胸の据わっている感じがあり、両親譲りのはっきりした瞳に、白塗り化粧に負けない不思議な眼力が宿っていて、どうしても吸い込まれて見てしまう。
巫女姿から、武装女に早変わりをして、殺陣を演じ、最後は、バンッと見得を切って、颯爽と花道を走り去っていくなど、團十郎と一緒に舞台にいても、負けないスター感があって、14歳でこれって、将来すごいことになるのではと思ってしまった。
勸玄くんは、幼少期からお父さんと一緒にメディアに出ていたから、「男の子は歌舞伎役者になって、いずれ海老蔵、團十郎を襲名するんだろう」と思っていた。でも、姉の麗禾ちゃんはしばらく顔が隠されていたし、影が薄いのかと思い込んでいた。
ところが今は、歌舞伎の舞台で主役を張っている。團十郎家としては、女形とは違う、歌舞伎役者・市川ぼたんをこれから生み出そうとしているのではないかと感じた。
また、市川ぼたんに向けて、客席(大向こう)から「成田屋ぁっ!」と声がかかっていたのも、よかった。
大向こうも、男しか声を出してはダメだということになっているけど、スーパー歌舞伎なんかだと、女の人もOKになっているし、ボタンを押すと「ヨロズヤー!」とか「ハツネヤ!」とか音声の出る“大向こうグッズ”が売られることもあったりする。
歌舞伎の世界も時代に合わせてどんどん変化して、常に新しいことをやっているんだなと思う。
私は、すっかり市川ぼたんのファンになってしまったよ。どんどん活躍してほしいな。