高森明勅

「検証可能で不可逆的」でない非核化?

高森明勅

政治・経済
2018年 6月 15日
米朝首脳会談に先立って、アメリカ側は北朝鮮の
「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」が、
譲れない条件だとしていた。
 
しかし、結果はどうか。
 
「検証可能で不可逆的」がスッポリ抜け落ちた。
 
共同声明に盛り込まれたのは「完全な非核化」。
 
検証可能でなく、不可逆的でもない非核化。
 
そんなのは「完全」では全くあり得ない。
 
どころか、実質的には「非核化」ですらないだろう
(“段階的”非核化という非「非核化」)。
 
リップサービス以上の中身はない。
 
にも拘らずトランプ米大統領は、
北朝鮮が長年一番欲しがっていた
「(体制の)安全の保証」を、
いきなり約束してしまった。
 
明らかにアメリカ側の大幅かつ一方的な譲歩だろう。
 
トランプ大統領には、そんな譲歩をしてでも、
来る11月の米中間選挙(更に再来年の大統領選挙)
に向けて、“歴史的”な米朝首脳会談の「成功」という
実績(?)を、国内にアピールする必要があった。
 
だから、北朝鮮に完全に足元を見られたのだ。
 
この会談を蹴飛ばすことなく、
実現させた時点で、アメリカの劣勢は決定していた。