大須賀淳

「ネトウヨ内需」で損なわれる「外〝価〟」

大須賀淳

2025年 12月 24日

男系男子限定の皇室典範の改正や、選択的夫婦別姓の実現を求めた国連女子差別撤廃委員会の勧告から1年余り。現在の日本は、これらのテーマにおいて真逆の方針を採る高市政権が「高支持率」を集めている状況です。

 

その高市首相は、日中平和友好条約(その根底となる日中共同声明)の内容をひっくり返しかねない「アドリブ答弁」を行い、このタイミングで全く起こす必要の無かった中国との緊張状態を招いてしまいました。

 

客観的に見て、日本の姿は世界に「条約を軽視する国」と見られかねない状況が進行しています。これは、「無法が進行する世界」において、程度の差はあれど大別すればロシアや北朝鮮と同じ性向の国家という事になってしまいます。

 

加えて、日本の「アイデンティティー」でもあった「強い日本円」は暴落している有り様。

「経済的に苦境」で、「周辺国との緊張を生む極右政権」が支持を集め、国際条約を軽視する姿勢の国。

↑これ、「日本」という具体名を出さずにどう思うか訪ねたら、大半の人は「相当にヤバい国」と答えるでしょう。

 

この状況においても、日本は一応「世界第2位の外貨準備高」を持つ国ではあります(中身は米国債等なので、すぐに使える資産があるわけでは無い)。しかし、その虎の子よりもずっと早くそして速く減り始めているのが、外貨ではなく「外〝価〟」、つまり外国に対する信頼や存在感といった価値ではないでしょうか。

 

その要因の中でも、女子差別撤廃委員会の勧告や存立危機事態発言といった事柄は、ネトウヨ的支持層に向けたアピール、いわば「ネトウヨ内需」のために出された側面が強いもの。実際の経済でもそうですが、たとえ内需主導型であっても、外との関係性を蔑ろにしては、あっという間に破綻が訪れてしまいます。

 

最悪なのは、皇位継承も選択的夫婦別姓も、世論調査などに表れる大半の国民意識と、政府(与党)の方針が真逆だという事です。

 

なんだか、他の家族は一生懸命働いている中で、一人だけ働かないのに内弁慶で浪費家の引きこもり息子のご機嫌をとりつづけたら、家計が傾き親戚や近所の評判も最悪に、みたいな姿です。

 

引きこもりの穀潰し息子が一番声高に「我が家は由緒ある名家だ!」みたいにイキってたら、恥ずかしいやら頭に来るやらで引っ叩きたくなるでしょうが、家族がなおも甘やかし続けたとすれば、それは家庭全体が「一つの病い」の中にある状態です。

  

「強い、誇れる日本」を本当に希求する気持ちがあるなら、「外価」を霧散させ続けている者たちにこそ怒りを感じなければおかしい。

 

日本の「病い」の払拭も、そこからしか始まりません。