高森明勅

「男系女子」による1代限りの女性天皇という提案とその限界

高森明勅

皇室・皇統問題
2021年 5月 21日

皇位の安定継承を目指す有識者会議。
いささか意外と言っては失礼かも知れないが、
会議メンバーのヒアリング対象者への質問が面白い。

“1代限り”の女性(男系女子)天皇を提案された
京都産業大学名誉教授の所功氏に対し、次のような質問。

「男系女子まで皇位継承資格を認めるという考え方に対しては、
抜本的な皇位継承の安定化につながらない、やはり女系まで認めることが
安定した皇位継承につながるのではないかという意見もあるが、
どのように考えるか」

これは、まさに私の「意見」と同じ。

これへの所氏の答えは、以下の通り。

「この先どうなるかは、実のところ誰にも分からない。
今つくづく思うのは、男系男子がおられたら安心かというと、
三笠宮家の場合、立派な男子が3方おられたにもかかわらず、
お父さまより先に亡くなってしまわれた。
そういうことが、この医学・医療の進歩した現代でも
起きていることを忘れてはならない。
必ず男子が得られることを前提にして、男子だけで継ぐという
規定を続ける限り、万一の事態に対処し難くなる」と。

この発言の限りでは、確かにその通り。

だが、「男子だけで継ぐ」のは限界があるので「男系女子」にも
皇位継承資格を認めよう、という所氏の提案を踏まえて、
会議メンバーは、更にその“先”を問うている。

「男系女子」が即位されても、そのお子様に(男女を問わず)
継承資格がないのであれば、継承の行き詰まりを僅か“1代だけ”
先延ばしするに過ぎず、「抜本的な…安定化につながらない」と。

上記の回答は、ご自身の元の意見をただ繰り返されただけ。
質問自体には何ら答えていない。
と言うより、恐らく答えられなかったのだろう。
会議メンバーが取り上げた「意見」こそ正解なのは、
同氏もちゃんと理解しておられるはず
(もしそうでないなら、真正面から反論されたに違いない)。

なので、学者の矜持にかけて、政治的パフォーマンスとして
“否定”するような真似は、できない。
しかし、そうかと言って、“肯定”すると、ヒアリングで述べた自分の
(“匍匐〔ほふく〕前進”的な)提案を、自ら否定する結果になってしまう。

結局、イエスともノーとも言えないので、
上記のごとき、はぐらかしたような回答をせざるを得なかったのだろう。
それにしても、会議メンバーの質問には、
大切なポイントを衝いたものがあって、頼もしい。

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