高森明勅

「退位」は国政事項にあらず

高森明勅

2017年 3月 7日

昨日のブログで以下のようなことを述べた。

(1)天皇のご意思に基づく行為を、そのまま憲法の国政権能禁止に
抵触すると見ることは出来ない。
2)その行為自体が政治的な意味を持つ場合にだけ、
該当すると判断すべきだ。
(3)「退位する」
という行為は国政権能には当たらない。
(4)従って、
天皇のご意思を退位の要件の1つとしても、
憲法には抵触しない。

この(3)を更に補強しておく。

天皇の地位にある方が生前にその地位を退く「退位」が、
もし国政事項だと仮定した場合にどうなるか。

皇嗣が即位前にその立場を離れる「皇位継承順序の変更」
皇室典範第3条)も同様と考えねばならないだろう。

更に、天皇の国事行為を全面的に代行する
「摂政の設置」(
同第16条第2項)も同じ。

ところが現在の制度では、これらは皇室会議の議決によって
決定される。

その皇室会議には、よく知られているように、
皇族を代表して2名の皇族が(
三権の長らと共に)議員になられる
(同第28条第2項)。

現在は、秋篠宮殿下と常陸宮妃華子殿下。

これらの方々が、議員として議決に加わられるということは、
先の事案は明らかに国政事項ではない、としなければならない。

そうでなければ、皇族が国政事項に関与することになるからだ。

ならば、退位と皇位継承順序の変更などとの、
本質的な違いは見出だされないから、初めに設けた仮定を覆す他ない。

即ち、退位もそれらと同じく国政事項では“ない”と。

このように退位自体が国政事項でなければ、
繰り返す迄もなく、
そこに天皇のご意思を介在させても憲法上、
何ら疑念を差し挟む余地がない、と言わねばならない。

こんな自明の事柄を、改めて反復・強調しなければならないとは。

正直に言って、情けない。