高森明勅

トランプ米大統領の登場

高森明勅

2016年 11月 9日

アメリカ大統領選挙をトランプ氏が制した。

多くの人々には意外な結果だろう。

だが、いち早くトランプ勝利を予測されていた人もいる。

例えば国際政治学者の藤井厳喜氏。

氏はこう断言されていた。
これから余程の異変がない限り、トランプ候補の勝利は
確実であろう。
トランプ当選を阻むのは、
最早、暗殺や事故死といった非常事態しか
考えられない」と。

その上で、今回の大統領選挙の構図を次のように整理されていた。

「今年の大統領選挙は、エスタブリッシュメント対アンチ・
エスタブ
リッシュメント、ボーダーレス・
エコノミー派対国民国家派、
エリート主義対ポピュリズムの戦いである。
ヒラリーが代表しているのが前者であり、
トランプが代表しているのが後者である」
(『史(ふみ)』
11月号)と。

ここで想起されるのは、エマニュエル・トッド氏の指摘だ。

イギリスとともにグローバリゼーションを牽引してきた
アメリカで
は、ドナルド・トランプが支持を得て共和党の
大統領候補に指名されました。
これも英国EU離脱(ブレグジット)に通じる現象です。
国家としてのアメリカの再建を夢見て、グローバル化の言説からの
自己解放を要求しているのです」
(『
問題は英国ではない、EUなのだ』)と。

トランプ大統領の誕生は、本人の資質とは別に、
トッド氏が提唱するグローバル化からネイション(国民)
再構築へと向かう、
先進世界の新たな歴史的転換の重大な指標に
他ならない。

いずれにせよ、
今回の選挙結果の影響を最もストレートに受けるのは、
紛れもなく我が国だろう。

その事実から目を背けてはならない。