高森明勅

昭和大嘗祭「亀卜」の真実

高森明勅

2017年 12月 18日

天皇の祭祀中で最も重大な大嘗祭。

大嘗祭では国民が献じる新穀が最も大切。

その新穀を献じる悠紀(ゆき)・主基(すき)両地方を、
「亀卜(きぼく)」
という古来の作法で選ぶ。

その亀卜の実態について、
昭和の大嘗祭に実際に奉仕した人物の証言がある。

以下の通り。

陛下の御手もとには、まず、
その候補地として悠紀地方にて3県、
主基地方にて3県が進められる。
そうすると陛下は、
その内の2県に御加点
(御爪〔おつめ〕の印〔しるし〕)される。
この御加点2県の名を密封した封書を卜串(うらぐし)という。
この卜串が卜者(ぼくしゃ)に渡されるのである。
昔は神祇官(
じんぎかん)の卜部(うらべ)が行うが、
大正大礼(たいれい)
以来は登極令(とうきょくれい)
の規定によって、掌典(
しょうてん)が奉仕している。
そして亀卜を行った上、卜合、
不卜合は卜串の包みの
表面に書して大礼使(たいれいし=当時、
即位関連行事を取り仕切った役所)長官を通じて
御手元に返上する。

ゆえに卜者はその内容、
つまりどの県が卜合であったか否かは、
全然わからないのである。

したがってこれは卜者の決定ではない。

その決定は神と陛下、否(いな)、
陛下の御決定
に神も加わらせ給(たま)うと
見るべきものであろう。

はじめて天皇の御位(みくらい)に即(つ)かれる
重大祭事の稲を得る方法として、
まず以上のごとき亀卜をもって、
斎田を卜問う故実が、永く続き、
今に行われていることは誠に
尊貴な手振(てぶ)り〔=習わし〕
というべきであろう」
(川出清彦『祭祀概説』)と。

安倍内閣が、新しい天皇のご即位を
「5月1日」に先延ばししたのは、天皇の「
重大祭事」における
「陛下の御決定に神も加わらせ給う」
神聖な領域に、
世俗の政治権力があらかじめ“制約”
を設けた事を意味する。

僭越この上ない無礼な振る舞いと言う他ない。

なお、拙文が掲載される予定だった
『月刊Hanada』
2月号の巻頭は
「独占インタビュー 安倍総理、新たなる決断」。

安倍首相にジャーナリストの有本香氏が
インタビューを行っている

これでは、同じ号に私の文章は載せられないだろう。