高森明勅

「詔書」を知らない政治家ども

高森明勅

2014年 11月 21日

先に念のため、衆議院の解散は「天皇の国事行為」
あることを指摘した。

こんなの憲法学以前の、社会常識の基礎の基礎。

と思っていたが、
今日、信じがたい非礼かつ不敬なハプニングがあった。

国会で伊吹衆議院議長が「解散の詔書」を読み上げている途中で、
議員達が恒例の万歳三唱を始めてしまったのだ。

詔書の文面は以下の通り。

「日本国憲法第7条により、衆議院を解散する。
 御名(ぎょめい)御璽(ぎょじ)
 
平成26年11月21日 内閣総理大臣 安倍晋三」 ところが、

「御名…」と読みかけたところで、早々と万歳を始めた。

伊吹氏はむっとした表情を見せ、全文読み終えた後、
万歳をやり直させたらしい。

当然だ。

詔書は
「御名(天皇陛下のご署名)」と「御璽(天皇陛下のご印章)」
が揃って、
はじめて詔書たり得る。

今時の政治家は、そんなことも知らないのか。

それとも、伊吹氏が読み上げているのが「詔書」であることすら、
知らないのか。

うっかりミスで済む失態ではない。

衆議院の解散が「天皇の国事行為」であることを、
頭から無視した振る舞いで、
日本という国の根本的な仕組みが分かっていない証拠だ。

これで国権の最高機関たる国会の議員だから呆れる。

今回の解散の性格を図らずも露呈してしまったと言うべきか。

解散のプロセスは概略、次の通り。

閣議決定→天皇陛下のご決裁。

解散詔書に「明仁」とご署名。

陛下のご意思をうけて侍従が詔書に御璽を捺す。

御璽には「天皇御璽」の4文字が彫られている。

教育勅語や終戦の詔書に捺されたものが今もそのまま使われている

→詔書が内閣に届く。
→詔書が衆議院議長に渡され、
議長がこれを読み上げる。

ー念のため。