高森明勅

男系「新宮家」創設案の問題点(中)

高森明勅

2014年 8月 23日

(2)提案が実現する可能性も不透明だ。

百地氏は候補者として何故か、
旧宮家系国民男子の「未成年者」4人だけを例示しておられる。

これは、竹田恒泰氏のこれまでの振る舞いなどを念頭に置いて、
除外されたのだろうか。

確かに、旧宮家系の4人の「未婚の成年男子」の場合、
竹田恒泰氏以外も、
秋篠宮殿下より年上だったり、
織田信長の生まれ変わりと称する「
プロのゲーマー」だったり、
これから新宮家を創設して戴くのに、
果たして「ふさわしい」
かどうか、疑問視されよう。

しかし未成年者の皇籍取得には、
それ以上の困難があるのではないか。

百地氏は、
皇室のご意向を伺いつつ、ふさわしい方々に皇族になっていただき」
とおっしゃる。

だが「皇室のご意向」以前に、
保護者や本人の意向が最優先されるべきは、勿論だ。

対象となるのは、具体的には次の4人。

〈1〉賀陽(かや)正憲氏のご子息2人(十代後半)。
〈2〉
東久邇征彦氏のご子息1人(小学生)。
〈3〉
同照彦氏のご子息1人(小学校入学前)。

この中、賀陽正憲氏は、
かつて、愛子内親王殿下のお婿候補になる可能性があることについて、
見解を質された時、次のように述べておられる。

立場が違いすぎ、恐れ多いことです。息子たちはPSPで遊ぶ、
普通の男の子です。
皇室様へのお婿入りなど考えること自体、
失礼と思います」と。

既に民間に入って歳月を経、世代も替わっている以上、
皇室と国民の区別を弁えた、
極めて健全な反応だろう。

お婿入りについてさえ、このように固辞されているのであれば、
ご結婚も介さないで「
皇族になっていただ」くなど、
ますます困難だろう。

東久邇征彦氏も同じ質問に、こう答えておられる。

仮にそのような要請があっても、それは現実的に難しいかなと。
そんなお話になってもお断りさせていただくと思います。
息子には普通に生活してほしいと思っていますので」と。

より明確な“辞退”の意志表示だ。

弟の照彦氏はどうか。

コメントは差し控えさせていただきたく存じます」としつつ、
取材記者によれば、他の2人と同様、「大困惑の態」だったという。

以上のようであれば、旧宮家系未成年男子の皇籍取得の実現可能性に、
決して過大な期待は出来ない。

そもそも現代の日本で、
未成年者を親からも親戚からも友達からも引き離して、
全く別世界の皇室に迎え入れ、独立した新しい宮家を創設するという
プラン自体、
頗る無理がある。

その養育には誰が、どのような立場で当たるのか。

(皇室内に)親もいない、ご公務にもつけない、
祭祀にも参列出来ない未成年の「皇族」(
新宮家の当主?)を一体、
皇室の中にどう位置付けるのか。

皇室のご意向」と言っても、対応の仕様があるまい。

宮家の創設を成年になるまで待つのなら、
今いる未婚の成年男子との関係は、どうなるのか。

難題山積で、およそその実現可能性は限りなくゼロに近いだろう。 

 (つづく)