高森明勅

STAP細胞問題を巡る論点整理

高森明勅

2014年 5月 2日

神経内科医の西岡昌紀氏がSTAP細胞問題を巡る
論点整理をされ
ている(『WiLL』6月号)。

一読、素直に頷ける内容だ。

西岡氏は、問題の焦点を3つに整理された。

(1)STAP細胞は本当に存在するか?
 (2)小保方晴子氏や共同研究者らは、
画像やデータの捏造を
行ったか?
(3)小保方氏の過去の論文に不正はあったか?

これらの中、(3)は勿論、小保方氏自身の信用に関わる問題だ。

しかし、STAP細胞の存否には直接、関係しない。
もし過去の論文に不正があっても、それがそのままSTAP細胞が
虚偽だった「証拠」
にはならないからだ。

よって、真に追及すべきは(1)と(2)とする。

その上で、およそ次のように指摘された。

(1)については、論文の不備が明らかになった以上、
小保方氏にSTAP細胞の存在について改めて証明する責任がある

これは当然だ。

但し、これについての判定は、小保方氏も含め、
この分野の専門家による実験結果を待つしかない。

ならば、(これは私―高森―の感想だが)その結果も出ないうちから、
素人があれこれ嘴を挟むべきではあるまい。

(2)はどうか。これは逆に、捏造を主張する者たちに
挙証責任がある。

小保方氏の論文の不備は単なる不注意によるミスではなく、
故意の捏造であり、不正であった、
と疑問の余地なく証明してみせる必要があるのだ。

その証明は果たされているのか。

西岡氏は、これまでの経緯を検証した上で、こう断ずる。

たしかに彼女は未熟だった。
しかし、彼女が意図的な『捏造』
をした証拠は皆無である」と。

西岡氏は慎重に
4月16日の時点で明らかになっていることを前提にして書く」
と断っておられる。

だがその後、STAP細胞調査委員会の委員長を務めた
石井俊輔氏が責任者にな
っていた論文で、
画像が加工されていたことが明るみに出たり、
京都大学の山中伸弥教授が責任者を務めた論文の画像や図表でも
惑が指摘されるなどのことが、相次いでいる。

石井氏の場合は悪意のない不注意で、
小保方氏の場合は確信犯的な捏造―との線引きを、
誰もが納得出来る形で明確に出来るのか。

捏造の証明はますます困難になっているのではないか。

なお、西岡氏には『放射線を医学する―ここがヘンだよ
ホルミシス理論」』(リベルタ出版)という著書があるようだ。

読んでみたい気がする。