高森明勅

平成の国民、最後の責務

高森明勅

2016年 9月 1日

「朝まで生テレビ」の中で、天皇陛下のお気持ちにお応えする為に、
「二段階」で対処しよう、
という声があった。

先ずは、“一代限り”の特別立法で可及的速やかに陛下ご自身の
ご譲位を可能にする。

その次に、
じっくり時間をかけて皇室典範の包括的な改正を
検討する、と。

冗談ではない。

これまでの経緯を思い出せ。

悠仁親王ご誕生で何ら危機を脱した訳でもないのに、
皇室典範改正の気運はたちまち萎んでしまった。

以来、徒に歳月のみが流れた。

この度は、陛下の直接のお言葉でやっと事態が動き始めた。

にも拘らず、ごく一握りの国民から孤立した“反逆者”に
無用の配慮をして、
またぞろ問題の「先送り」を図ろうとしている。

それは、何より陛下ご自身のお気持ちに反する。

又やがて同じ問題に直面することは明らか。

更に、特別立法が違憲になるのを免れる為に
“抜け穴”を作るやり方は、
認められない。

典範そのものの存在意義を否定し、その体系性、整合性をも
毀損するからだ。

そもそも二段階と言いながら結局、
一段階”のみでお茶を濁す結末になることは、今から断言できる。

陛下は国民に「深い信頼と敬愛」を寄せて下さった。

その上で「切に願っています」とまでおっしゃられたのだ。

不敬不忠な雑音を拝し、政治家の卑怯な振る舞いを叱咤し、
必ずや陛下のご念願を叶えて差し上げなくてはならない。

それこそが、平成の国民の最後の責務だ。

後世の日本人から、あの時、陛下の玉音放送を拝した
平成の国民は一体、
何をしていたのか、と非難される結果にしては
ならない。