高森明勅

天皇陛下の「問いかけ」

高森明勅

2017年 3月 4日

昨年7月13日夜、NHKは、天皇陛下が「生前退位」
ご意向を示されている、との驚きのニュースをスクープした。

そのニュースが流れた直後、『月刊Hanada』

花田紀凱編集長から原稿依頼があった。

前にもブログに書いたように、締め切りは16日。

突然の大ニュースに突然の執筆依頼。

何の準備もなく、既に入っていたスケジュールの
合間を縫って書き上げたのが、
7月26日発売の
同誌9月号に掲載された「陛下の『ご譲位』
をどう受け止めるべきか」
(私が付けた題名は、確か「『
生前退位』既に聖断は下った」)。

勿論、8月8日に天皇陛下のお言葉がビデオメッセージとして
放送される
、ずっと前だ。

この文章の末尾を、私は以下のように締め括った。

些か長い引用になるのをご容赦戴きたい。

「このたび、陛下の生前退位のご意向が明らかになり、
多くの国民が驚いた。
しかし、陛下はそこまで真剣に『天皇』という途轍もなく
重いお立場を背負い続け、
その尊厳を傷つけまいと必死の
ご努力を続けてこられたのだ。
その年齢的、身体的な極点が見え始めた時、
皇位の神聖さを守り抜くために、その輝きをわずかでも
衰えさせないために、静かに譲位をお考え
になったのではないか。
改めて振り返ってみると、私ども国民は、
これまで天皇陛下はじめ
皇室の方々の沈黙のご努力とご忍耐に、
一方的に甘えっぱなし
だったのではあるまいか。
皇室の方々がだらしない国民に愛想を尽かされる
可能性があるなど
と、ツメの先ほども思い浮かべたことはないだろう。

自分のかけがえのない人生をこんな国民のために犠牲にしたくない
と陛下がお考えになるかもしれないなどと、
想像したこともないはずだ。

陛下はいま、私どもに穏やかに問いかけておられるのではないか。

あらゆる自由を制限されながら、
ひたすら国民のために尽くしてこられた陛下が望んでおられる、
天皇』の輝きを守るために自ら潔く退かれるという
“唯一”
の自由を、恭(うやうや)しく受け入れるのか、どうか」と。

この陛下のお問いかけに、平成の国民はどうお答えするのか。

その回答の時期は、もう目の前に迫った。