高森明勅

昭和大嘗祭での斎田行事

高森明勅

2017年 12月 11日

天皇の皇位継承に伴う大嘗祭。

天皇の数ある祭祀の中でも最も重大だ。

その大嘗祭で最も大切な意味を持つのが、
悠紀(ゆき)・主基(
すき)両地方の農民が献上する新穀。

その新穀を献上する特別の田を「斎田」と呼ぶ。

斎田は当然、“清らかさ”が求められる。

昭和天皇の大嘗祭での様子は『昭和大礼要録』(昭和6年)
によって知ることが出来る。

そこには「斎田の奉仕は弥(いや)
が上にも清浄を
期せざるべからざるを以て、其(そ)の地方に在(
あ)りては
斎田の修祓(しゅばつ=祓い)を最初とし、
新穀供納の完了に
至るまでの間、幾多の修祓・
祭儀を執行せられしが、その主たる
ものを斎田修祓式及(および)
田植(たうえ)式とす」と。

すなわち、天皇の神聖な大嘗祭に新穀を献上する斎田は
「清浄」
であるべきで、その為に「幾多の修祓・祭儀」が
執行され、
それらの中でも「主たるもの」は、「田植式」と
それに先立つ「
斎田修祓式」の2つだった。

ところが、「5月1日」のご即位では、
4月に田植えを行う地域では、
どちらも間に合わない。

だからと言って、それらの地域を予め候補から排除するのも、「
国民統合の象徴」
たる天皇のお立場に相応しくない。

かと言って、斎田の“清浄”を軽視してよいはずもない。

安倍政権は、天皇の一代に一度限りの大嘗祭を、
厳粛かつ恙(つつが)
無くに行って戴く為に、
万全を期すという考え方は、
爪の先ほどもないのか。