笹幸恵

「師匠」の恋愛観

笹幸恵

2017年 12月 7日

恋愛、不倫、別れ、こういう話になると、

私の脳内では突然「師匠」が出てくる。

師匠とは、作家・宇野千代。

以前、記事にもしたことがあるのだけど、

彼女の恋愛遍歴はものすごい。

というかムチャクチャ。

もちろん自分がフラれることもあるし、

かと思えばあっさり夫を棄てたりするし、

とにかく倫理観なんてそこには微塵もない。

相手の男性も結構ムチャクチャ。

 

で、彼女はいくつもの年輪を刻んで、言うのである。

 

男と女が別れるとき、一方が別れたいと思っているのに、

その相手は別れたくないと思っている。

そういう構図で騒ぐのが常だ。

けれど本当にそうだろうか。

本当は、相手だって同じように思っている。

口に出す勇気がないだけだ、と。

 

男たちが去っていったとき、

果たしてひとりになりたいという気持ちが

自分に微塵もなかったか。

 

別に心当たりがあるわけでもないのに、

この視点は、何だか私にはとても新鮮だった。

「別れたくないのにフラれた」とか、

「夫を寝取った相手の女が許せない」とか、

悲劇のヒロイン話が当時まわりに溢れていたからかな。

ウンザリするほどに。

 

私は宇野千代の熱心な読者ではありません。

けれど、誰に何と言われようと

自分の意思と愛を尊重し、

それと同じくらい相手の意思と愛を尊重した、

そこに自立した女の強さを見ます。

 

何が言いたいかって?

別れる男と女の問題は、当事者の数だけ

それぞれに事情がある。

それは他人には計り知れない。

当事者の自立した意思の問題でしかない。

にもかかわらず、赤の他人が正しいだの間違っているだの、

どっちが加害者でどっちが被害者だの、

言い募ること自体が無粋だということ。

 

少しも艶っぽくない。

もはや誰も、宇野千代の妖艶さを知らないの?