高森明勅

自衛隊を巡る初歩的な「誤解」

高森明勅

2018年 1月 28日

どうも自衛隊を巡って初歩的な誤解があるようだ。

根深い誤解が。

自衛隊は今のままでも軍隊である、と。

ただ、これまで歴代の政府が憲法の建前に配慮して、
口先だけで「
軍隊ではない」と誤魔化して来たに過ぎない、と。

ああ、誤魔化しだったなら、どれだけ良いだろう。

しかし、残念ながらそうではない。

正真正銘、自衛隊は「戦力」未満の非軍隊なのだ。

その証拠に常備の交戦規定を持たない。

だから、軍隊ならあり得ない“グレーゾーン”
この言葉こそ誤魔化しだが)なるものが存在してしまう。

グレーゾーンとは国防上の「巨大な穴」以外の何ものでもない。

その巨大な穴が公然と存在するという“事実”が、
国家の存立にとっていかに致命的な欠陥であるか。

人々は真面目に考えようとしない。

平時と戦時は切れ目はなく繋がっている。

それが軍事の常識。

だから軍隊は平時から交戦規定を常備している。

しかし、自衛隊はそうではない。

「防衛出動」というハードルの前と後で、ハッキリと断絶がある。
この一事だけでも軍隊「失格」だ。
更に、
手間暇かけて防衛出動に漕ぎ着けても、
自衛隊の装備自体が独立した軍隊としての体系性、
完結性を備えていない。

当然、それに見合った訓練しかしていない。

いざ軍事行動が始まっても、そこで生じ得る不祥事に対処する、
軍刑法も軍事裁判所もない。

等々ー。

まさに「戦力」未満の非軍隊そのもの。

非軍隊では軍隊に対抗できなくて当たり前。

仕方がないから、わが国の防衛に米軍の力が「絶対的に」必要となる。

自衛隊幹部だった方が以前、「自衛隊が世界で最も弱い理由」
といった本を出して、自衛隊の現状を嘆いておられた。

その自衛隊を非軍隊に押し込めている“縛り”を、
適切な形で解く事こそ、憲法9条改正の主眼に他ならない。

にも拘らず、縛りを1ミリも緩めないのが「加憲」論。

自衛隊を愛する国民なら、とても支持できないはずだ。