高森明勅

大がかりな軍事制圧なき国内統一

高森明勅

皇室・皇統問題
2018年 8月 24日
私はこれまで、大和朝廷による国内統一の特徴として、
大がかりな軍事制圧が無かったらしい事を繰り返し
指摘して来た(『歴史から見た日本文明』平成8年刊ほか)。
 
その場合、考古学の岩崎卓也氏、文献史学の長山泰孝氏や小林敏男氏
らの
学説に依拠していた。
 
近頃、それを補強する見解が示されているので、紹介しておく。
 
「近年、ヤマト政権を中核とする日本列島の
諸勢力の統合について、大きな問題提起がされている。
それは考古学的な立場からの分析として、
古墳時代に列島社会で大きな戦争は確認できない
という指摘である…
 
考古学の研究では戦争の有無を確認する指標として、
防御集落、武器、殺傷人骨、武器の副葬、武器型祭器、
戦士・戦争場面の造形などが挙げられている。

弥生時代には高地性集落や矢じりの刺さった人骨など
戦争の痕跡は多く発見されている。
 
ところが古墳時代になるとそのような
遺跡・遺物がなくなってくるという」
(河内春人氏『倭の五王』平成30年)。
 
ここで根拠とされているのは下垣仁志氏の論文
「古代国家論と戦争論』(『日本史研究』654号、平成29年)。
 
改めて言う迄もなく、
弥生時代から古墳時代への転換をもたらしたのは、
大和朝廷による国内の統一だ。