高森明勅

麻生太郎氏の改憲論・旧宮家「復帰」論

高森明勅

皇室・皇統問題
2019年 12月 12日

麻生太郎副総理兼財務大臣。
言う迄もなく、安倍政権の屋台骨を支えて来た有力政治家だ。
その麻生氏が、憲法改正と皇位の安定継承を巡り以下のような
発言をしている(『文藝春秋』1月号)。

「憲法改正は自民党の党是です。
…国政選挙に6連勝した安倍政権が憲法改正をやらなかったら、いつやるのか。
…もっとも、残り2年を切った総裁任期で、憲法改正案を発議し、
国民投票に持ち込むのは政治日程上、非常に厳しい。
安倍総理が本気で憲法改正をやるなら、もう一期、つまり総裁4選も
辞さない覚悟が求められるでしょうね。
当然ながら、安倍さんの腹の中でも、憲法改正に賭ける執念は
今も変わっていないと思います」

「日本のように、二千年以上の長きにわたって同じ場所で、
同じ皇室を戴いている国は他に1つもない。
…だからこそ、女系天皇などはあり得ません。
歴史上、女性天皇は8人10代存在しますが、全て男系です。
皇籍離脱した11宮家は伏見宮家にルーツを持ち、歴代天皇と男系で
連なっている。
まずは、11宮家から未婚の男子を皇籍に復帰させることを考えるべき。
こうした日本にしかない歴史にこそ、世界は尊敬の念を抱いているんです」

政治的に無力な一介の評論家ならともかく、第2次安倍政権の発足以来、
一貫して政権の中枢に座り続けて来た政治家の発言としては、
いささか首を傾(かし)げざるを得ない。
今更そんな事を言う前に、これまで憲法改正と皇位の安定継承の為に、
麻生氏自身がどれだけ具体的な努力をして来たのか。
随分、無責任な印象を拭(ぬぐ)えない。

「“11”宮家から未婚の男子を皇籍に“復帰”させる」という言い方からすると、
旧宮家のうち、少なくない家が既に廃絶した事実さえ知らず、
かつて一度も皇籍になかった(どころか、親さえ国民だった)人物が、
新しく皇族の身分を“取得”する事の重大さを、どれだけ自覚しているかも
疑問だ。

国民としての権利と自由を憲法で保障された人々に対して「させる」
という表現も、政府の人間(しかも最高権力者に次ぐ副総理)の発言としては、
穏やかではあるまい。

 

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