大須賀淳

矛盾と欺瞞だらけ!皇統問題への高市答弁

大須賀淳

2025年 12月 25日

まーさんの動画でも紹介されている通り、れいわ新選組・たがや亮衆議院議員による「古代王権は男系・女系の両方が機能する双系であったとの歴史学説と高市早苗総理大臣の皇位継承についての考え方に関する質問主意書」に対し、高市早苗首相名義での答弁書が公開されました。


答弁書の原文はこちら


はっきり言って矛盾と欺瞞のオンパレード!というのが、私の感想です。以下に、読んでいて感じた疑問を記します。


答弁書では、2006年の安倍官房長官(当時)による「これは学問的な知見や個人の歴史観、国家観にかかわるものでございまして、私も官房長官として政府を代表する立場でございますので、特定の立場に立つことは差し控えさせていただきたい」という答弁について「政府の立場に変わりはない」と述べています。


一方で、高市首相自身は「男系による継承」という特定の歴史観を政策の絶対条件として掲げています

 

「特定の立場に立たない」と言いながら、実際には「双系制」などの有力な歴史学説を無視し、「男系限定」という特定の立場のみに固執して政策を推進している現状は、明らかな二枚舌です 。政府の公的な中立性と、高市首相の個人的な信条が完全に衝突しており、整合性が取れていません。

 

また、国家の根幹である皇位継承について、高市首相が(過去発言とは言え、国会の質疑で)「Y染色体」という科学的(っぽい)論拠を持ち出した事実があり、それが政策判断の一要素となっていると考えられる以上、それはもはや個人の趣味嗜好の範疇で収まるものではありません。

 

科学的裏付けを問う質問に対し、「政府として答える立場にない」と逃げるのは、自身の主張に客観的な正当性がないことを自ら露呈しているに等しいものです 。

 

こうなると、歴史学の有力説である「双系制」の立場を採る専門家へのヒアリングを、「国会で議論されている」(ちゃぶ台返しで止めたのは自民だぞ!)ことを理由に「考えていない」と拒絶するのは、自分たちに都合の良い物語(万世一系・男系絶対)だけを前提に議論を進めたい思惑以外のものを1mmも感じる事はできません。

 

学術的な知見の収集自体を放棄し始めたら、日本は近代国家としての資質を根本から疑われかねません。男系固執論において「歴史」「伝統」を呪文のように繰り返しながら、「実際の歴史、伝統はどういったものだったのか?」という事に誠実に向き合う事を拒む。「権力者」がそれを行うというのは、その時点で歴史の歪曲にも等しい態度と言えます。

 

さらに、一番肝心なポイントである皇統の安定については「今、継承資格者がいるから大丈夫」というような狭い視野に終始しており、長期的な安定性という問いには全く答えていません。ここは、「皇族数の確保」などという文言そのものの冷たさと同じく「な〜んも真剣に考えちゃいないんだな」という事をつくづく再認識しました。

 

たがや議員には、ぜひ追撃の質問を期待しますが、最後に「自分が追加質問するならここを問いたい」と思ったポイントを箇条書きで記しておきます。

 

●首相が公の場で、皇位継承の正統性の根拠として「男系継承」を絶対視する発言を行うことは、政府の方針決定に多大な影響を及ぼすもの。これを「個人の発言」として政府の責任から切り離すことは許されるのか?

●「Y染色体論」が「個人の発言」であるから答えられないとするならば、総理大臣が科学的に論拠の乏しい「トンデモ論」を基に国家の制度設計を構想している現状を是認するのか?

●有力な歴史学説である「双系継承」などを「特定の立場」として排除し続ける一方で、実在が疑がわしい「欠史八代」を含む男系継承を絶対視することは、客観的な歴史研究を軽視しているのではないか。

●「慎重に」という言葉を免罪符にして、大多数の国民の思いとも遊離した男系固執論で皇位継承の根本的議論を「実質的に先送り」する事こそが、皇統の断絶を招く行為に他ならないのではないか?

 

次は書面ではなく、議場での答弁を聞きたいですね。