高森明勅

三島由紀夫の天皇論

高森明勅

2013年 11月 25日

三島由紀夫は福田恒存との対談「文武両道と死の哲学」
(『
論争ジャーナル』昭和42年11月号、
後に『
若きサムライのために』に収録)の中で、
自らの「天皇論の概略」
を語っている。

その一部を紹介する。

「…ぼくは、工業化はよろしい、都市化、近代化はよろしい、
その点はあくまで現実主義です。
しかし、
これで日本人は満足してゐるかといふと、
どこかフラストレイトしてゐるものがある。
その根本が天皇に到達する…

天皇はあらゆる近代化、
あらゆる工業化によるフラストレーションの最後の救世主として、
そこにゐなけりやならない。

…それはアンティエゴイズムであり、アンティ近代化であるけれど、
決して古き土地制度の復活でもなければ、農本主義でもない。

近代化の過程のずつと向うに天皇がある…

天皇といふのは、国家のエゴイズム、
国民のエゴイズムといふものの、一番反極のところにあるべきだ。

…その根元にあるのは、とにかく『お祭り』だ、といふことです」



この発言からすでに45年以上が経過した。

しかし今も、その指摘の斬新さは、決して古びてはいない。