高森明勅

私邸に住み続ける首相の「公」度

高森明勅

2013年 11月 23日

国民の中で最も公的な人物は誰か。

恐らく内閣総理大臣だろう。

憲法上「国権の最高機関」
とされる国会の衆参両院の議長と比べても、
やはり国政の最高責任者たる内閣総理大臣の方が、
より上回っていよう。

だがそんな総理大臣でも、
公邸に移らないで私邸に住み続ける自由は、許されているようだ。

危機管理を声高に唱える安倍首相は、政権発足から1年近く経つ。

しかし、いまだに私邸から官邸に「通勤」している状態。

それで非常時の危機対応は万全なのか。

さすがに、国会でも議論になっている。

政府サイドは、災害時に交通渋滞が起こっても
オートバイで15分以内で官邸に着ける」と説明している。

途中、道路そのものが遮断されるような場合のことは、
考えていないようだ。

オートバイでテロなどの危険はないのかも、考慮外。

そんなリスクに目を瞑って、私邸に住み続ける理由は何か。

「過ごしやすい」からとか、
昭恵夫人が「自由な生活が束縛される」のを嫌がっている為とも、
言われる。

まさか、公邸に出ると噂されている幽霊が怖いからではなかろう。

いずれにしても呑気な話だ。

「戦後レジーム」的気楽さと言うべきか。

比較するのも非礼ながら、天皇陛下が上記のような理由で、
皇居の外に住み続けるなんて事態は、
爪の先ほども想像出来ない。

わが国における究極の「公(おおやけ)」の
体現者たる天皇陛下と内閣総理大臣とでは、
公共性の程度において、天地雲泥の隔たりがあるということだ。