高森明勅

ご立派だった高円宮妃殿下のスピーチ

高森明勅

2013年9月11日 14:10
ブエノスアイレスでの高円宮妃久子殿下のスピーチは素晴らしかった。

まず、品格溢れるご態度そのもので、
我が国の皇室の高雅さを世界にお示しになった。

またスピーチの中では、五輪招致については見事に一切、
お触れにならなかった。

他国の王室はいざ知らず、
日本の皇室はそうした「綱引き」の現場にまで降りていくような
存在ではないことを、鮮明にされたのだ。

日本政府は五輪招致をアベノミクスの切り札と考え、
消費増税の前提となる経済指標を上向かせようと、
背に腹は替えられぬとばかり、手段を選ばない挙に出た。

皇室の政治利用との批判を覚悟で、
高円宮妃殿下のご出馬を迫ったのだ。

これに対し、妃殿下は日本サッカー協会の名誉総裁として、
現地のサッカー関係者のお招きに応じてサッカー関連の行事に
お出ましになり、その「ついでに」IOC総会にも立ち寄るという形で、
ご出席になったようだ。

しかもスピーチでは、
フランス語で心を込めて各国の被災地支援へのお礼を述べられた後、
英語に切り替えられた冒頭、
自分がこのような場にいることを参加の皆さんも驚いているでしょうし、
私自身も同じように驚いているとハッキリおっしゃった。

これは、皇族として許されるギリギリの表現ながら、
明らかに皇族がこうした場所にいることに対する
「違和感」を、柔らかくかつ率直に表明されたものだ。

更に言えば、今回の政府のやり方に対し、
上品に釘を刺された格好だ。

妃殿下のエレガントな微笑みばかりが印象に残って、
この事は一般にほとんど気づかれていないようだ。

しかし関係者には、妃殿下のご表情が穏やかであればあるほど、
より一層、厳しいクレームとして、受けとめられたに違いない。

妃殿下のクレームは当然、
ご自身のお考えのストレートなご発露であると同時に、
陛下のご懸念を深く配慮されてのことだったはずだ。