高森明勅

研ぎ澄まされた誠実さゆえに

高森明勅

2013年 7月 23日
私が知る国分隆紀兄は、溢れる才能と、真っ直ぐな心根と、
精悍な容姿と、健康な身体と、日本男児としてのたしなみを、
全て一身に兼ね備えていた。

少し出来すぎた話のようだが、事実だ。

私は、人を羨んだことはない。

だが兄にだけは、それに近い感情が動かなかったと言えば、
嘘になるかも知れない。

兄と会い、別れた後は、いつも清涼な一陣の風に吹かれたように、
爽やかだった。

そんな兄が、不遇な酒びたりの日々の末に、
ほとんど窮死のような死を迎えようなどと、
どうして想像出来ただろう。


思うに兄は、自他に対し、あまりにも誠実過ぎたのではないか。

その過剰な迄に研ぎ澄まされた誠実さが、
兄を世俗的な成功や幸福から、遥かに隔たった場所にまで、
運び去ったのではあるまいか。

そのようにでも考えないと、とても納得出来ない。

それにしても、兄の死は早すぎた。