小林よしのり

博打みたいな漫画の描き方

小林よしのり

日々の出来事
2014年 10月 9日


今日も一日中、ペン入れだった。

チーフ広井がそんなに量はないと言ってたが、とんでもない。

一本まるごと全ページ、全コマにわしがペン入れしなければ

ならない章があって、今日はこの一本しか進まなかった。

いや、この一本もまだ終わってない。

毎日毎日、来週もペン入れを続けるしかないようだ。

 

描き下ろしで単行本を出すということは、原稿料は入って来ない。

先行投資でスタッフに給料を払い続けるのである。

長引けば長引くほど、投資額が嵩んできて、発売されても

売れなければ赤字が出る。

小説家ならば自分一人だから1年がかりで執筆しても大した

費用はかからないだろうが、漫画家はスタッフを雇っている

から莫大な費用になる。

単行本を描き下ろしで出すということは、大博打である。

 

だからこそ、もう描きたいものしか描きたくない。

売れそうなものを嗅ぎまわって描いて、それで大して売れな

かったら後悔しか残らない。

描きたいものを描くからペン入れの忍耐が続くのだ。

 

しかもこの歳になったら、後世に残せる作品を描きたい。

それは単に今現在、人々の暇つぶしになる作品ではなく、

わし以外の誰にも描けない作品でなければならない。

ちょっと、ごーまんかますが、『戦争論』や『天皇論』は、

わしが死んでも残るのではないかと思っている。