高森明勅

陛下の「道徳的警告」

高森明勅

2014年 6月 6日

足尾鉱毒事件の爪痕は、1世紀以上の歳月を経た現在もなお、
はっきりと残り続けている。

その意味で、「事件」は決して終わっていない。

陛下のご行動によって、我々は改めてその事実に気づかされる。

後に大逆事件で死刑になった幸徳秋水が起草し、
田中正造が明治天皇に渡そうとした直訴状を、
陛下ご自身がわざわざ田中の出身地までお足を運ばれて、
お読みになった。

これは到底、尋常な出来事ではない。

百年以上の歳月を超えて、このような「道徳的警告」

ごく自然体で発し得るのは、恐らく「天皇」
という
ご存在のみではあるまいか。

陛下のこの度のなさりようから、
平成の今、
眼前にある福島第1原発の事故による
被害への思し召しも、
自ずと拝察することが出来る。