高森明勅

礒崎首相補佐官の本音

高森明勅

2015年 7月 31日

礒崎首相補佐官は政府サイドの安保関連法案のエース。

その彼が「法的安定性は関係ない」と公言。

野党の攻撃を浴びている。政府は防戦一方。

何だか、安倍首相の“身内”が順番に、足を引っ張っているような光景。

しかし、礒崎氏は「確信犯」。

これまでも、例えばこんな発言を繰り返している。

「(集団的自衛権を巡る解釈変更は)政府の憲法解釈ですから、
まず形式的に政府がそれを変える権限を持っているのは当然のこと

「時代が変わっているわけですから、政府の憲法解釈を
政府が変えたらいけないという法理は、
基本的にありません」
(『Journalism』
2015年6月号)

政府は憲法解釈を自由に変更できる、と言い切っている。

法的安定性への顧慮など、全くなし。

そんなことが罷り通るなら、
政府の憲法解釈の公正中立さへの信頼は失われてしまう。

わざわざ憲法を改正する必要も、殆どなくなる。

と言うより、そもそも憲法が存在する意義自体を否定しているに近い。

礒崎氏の発言に対し、憲法学者の長谷部恭男氏は、
こう批判している。

今までできないと繰り返し明言してきたこともできるようになると
政府による有権解釈というもの自体のステータ
スが
根本的に不安定化したのだということになる。

これからは政府が『憲法でこれができる』
『これができない』
と言っても、
『今の政府は今のところはそう言っているね』
という、
ただそれだけの話になってしまう」(同前)と。

だが礒崎氏の発言は、決して彼1人だけの見方ではあるまい。

今回の安保関連法案を用意した面々が皆、
普通に抱いている「
本音」を、
彼がたまたま正直に披瀝してしまっただけのこと。

その意味では、安保関連法案の基本的な危うさを、
人々に垣間見せたという“功績”はある。