高森明勅

安倍首相の中東歴訪、もう1つの失策

高森明勅

2015年 2月 18日
日本人2人がイスラム国に拘束されている最中、中東を歴訪して
イスラム国と戦う諸国を支援する」と大見得を切った安倍首相。

2人が殺されたのは“自己責任”としても、全日本人が
テロの危険の中にいる」(安倍首相)状態に陥ったのは、
誰の責任か。

かつての、ルーピー鳩山首相の「国外、県外」発言さえ
霞んで見える大失策。

政府内部の検証委員会でどんな言い訳を捻り出しても、
取り返しがつかない。

戦後70年の年初に、いきなり“戦中”に飛び込むような
愚劣極まる行動だった。

だが、安倍首相は今回の中東歴訪で、更に別の失策も犯していた。

外交アナリストの河東哲夫氏は次のように指摘する。

「(今回の歴訪では)イスラエルのネタニヤフ首相と安倍首相の
親密さが、過度に演出された…。

ネタニヤフとオバマの関係は今や最悪だ。

ネタニヤフは来月に米議会の招待で訪米し、
イランとの交渉を始めているオバマ政権を真っ向から批判する
構えを示している。

…そのようなときに、安倍首相がイスラエルに

訪問し、ネタニヤフとの協力姿勢を大々的に打ち出したのは、
日本の対米関係にプラスになるまい。

さらに安倍首相は、エルサレムで
ジョン・マケイン米上院議員(共和党)と会っている。

彼は08年の大統領選でオバマの対立候補だっただけではない。

中東やウクライナなどを頻繁に訪問。

オバマの煮え切らない態度を公に批判してきた。

今年は戦後70年という微妙な時期。

…訪米を成功させ、アメリカからの支持を確保しておくべきだ。

それなのにネタニヤフやマケインらと友好関係をアピールし、
オバマ政権を刺激する齟齬を見せたのはなぜだろうか」と。

ネタニヤフもマケインも、オバマが頭を抱える“イケイケ派”。

オバマ政権にネガティブな印象を与えてでも、
彼らとの「親密さ」をことさら際立たせたのは何故か。

そんなに中東で「戦争」したいのか?

それとも単なる馬鹿か?