高森明勅

陛下のフィリピンへのお出まし

高森明勅

2016年 1月 28日

フィリピンは大東亜戦争最大の激戦地。

現地の人々も巻き込まれ、多数の死者が出た。

その為、同国では戦後暫く、強い反日感情が残った。

それが転換する契機が、皇太子時代の両陛下のご訪問だった。

この度は天皇として初めてのご訪問。

公式には国交正常化60周年を記念した国際親善。

しかし、陛下が続けて来られた「慰霊の旅」の大きな節目、
という性格が強いだろう。

鎮魂の曲「海行かば」に、
「大君の 辺(へ)にこそ死なめ かへりみはせじ」との一節がある。

今上陛下は、祖国の為に尊い一命を捧げられた英霊が戦死された場所
にまで、
わざわざご自身で御足を運ばれる。

国史上、かつて無かったこと。

ご高齢の陛下がそうまでして、歴史に対する厳粛な責任を背負い、
現代における聖なる務めを果たそうとされている。

それは図らざる、

今の日本への苛烈な道義的警告でもあるはずだ。

そのお姿を目に焼き付け、心に深く刻みたい。