高森明勅

三島由紀夫の予言

高森明勅

2015年 11月 25日

三島由紀夫は自決前、こんな文章を遺している。

私はこれからの日本に大して希望をつなぐことができない。
このまま行っら『日本』はなくなってしまうのではないかという感を
日ましに深くする。

日本はなくなって、その代わりに、無機的な、からっぽな、
ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済的大国が
極東の一角に残るのであろう。

それでもいいと思っている人たちと、
私は口をきく気にもなれなくなっているのである」
(「
私の中の25年」サンケイ新聞、昭和45年7月7日)

これと、近年の安倍首相の発言を対比してみる。

「世界一、ビジネス・フレンドリーな国にしたいと、
私たちは言い続けています。

この点、シンガポールに追いつき、できれば追い越したい。

真剣にそう思っています」(平成25年7月26日)

「今日は、皆さんに、『日本がもう一度儲かる国になる』
ということをお話しするためにやってきました。

私は、日本を、アメリカのようにベンチャー精神あふれる、
『起業大国』
にしていきたいと考えています。

規制改革こそが、すべての突破口になると考えています。

もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」
同年9月25日)

現在の日本が、三島由紀夫の「予言」を恐ろしいほど
的中させてしまっている“不幸な事実”に、
改めて気づかされるだろう。