小林よしのり

新海監督の「君の名は。」に感心した

小林よしのり

芸能・文化
2016年 9月 16日


『君の名は。』が予告編を見たときから気になっていた。

昭和28年頃に国民的大ヒットとなったメロドラマと

同じタイトルを使って、現代に甦らせたいものとは何

だろう?

 

公開されると凄い瞬発力で観客を増やして、あっという

間に『シン・ゴジラ』を超える勢いの大ヒットになって

いるようで、気になってとうとう見に行ってしまった。

 

アニメは基本的に嫌いだし、監督がオタク系の作風だと

聞いていたから、それならなお苦手かもと思っていたが、

なんと全然オタクな映画ではなかった。

 

『君の名は』『時をかける少女』『転校生』などの過去の名作

のエッセンスが、巧みに組み合わされ、SF的な要素が日常に

溶け込んでしまっている。

 

宮崎駿のような絵柄のオリジナリティはないし、芸術的な

ひとりよがりもないので、退屈になりかねない作品だが、

それでも展開の絶妙さと、絵の美しさに魅せられて、

あっという間に見終わってしまった。

 

ちゃんと戦後の名作『君の名は』のすれ違いの要素も取り

入れてあるし、現代の少女たちがこれにキュンキュンする

だろうことも十分に分かる。

 

今の少年少女、あるいは若者は、真知子巻きの『君の名は』

を全然知らないだろうし、『転校生』も『時をかける少女』

も知らない者が多くなっているだろう。

過去の名作のコンテンツを再利用して、現代のテクニックと

感性でよみがえらせるというのは、伝統の継承として正しい

方法論だ。

永遠に継承される魂はあるのであって、伝統は現代の社会

の中に常に内在させなければならない。