高森明勅

安倍政権「違憲」の譲位をごり押し?

高森明勅

2016年 8月 11日

天皇陛下のお言葉によって事実上、譲位への道筋は動かせなくなった。

ところが“政府関係者”の話によると、皇室典範の改正には手を着けず、
特別立法で変則的な「一代限り」の譲位を可能にしようとしている
らしい。

「特別法も事実上、典範の一部と見なせば、憲法2条に矛盾しない」
と。

政府関係者は当初、譲位は「憲法上、無理」
と言っていたのでは
ないか。

憲法の改正が必要だと。

なのに今度は、小手先の特別立法だけで可能だと。

全く支離滅裂。

「事実上…見なせば」って何なのか。

もしそんなデタラメが許されたら、
次々に特別立法で典範の内容を
変更できる。

皇位の継承は“専ら”皇室典範による、とわざわざ規定した
憲法第2条の意味は、
全く無くなる。

そもそも典範の存在自体が、無意味になろう。

典範改正によらず、特別立法による譲位は、
畏れ多いが明白な違憲。

万が一そんな違憲の譲位が無理やり行われたら、
尊厳かつ神聖であるべき天皇の地位は、その権威を決定的に
損なわれる。

更に日本国の為、日本国民の為、次代以降の皇族方の為に“こそ”
譲位を願っておられる陛下が、
ご自身「一代限り」の譲位なんて、
金輪際ご納得になる訳があるまい。

一体、何を考えているのか。

更に言えば、政府は無礼千万にも、皇太子殿下や以降の皇嗣方が
決してご長寿ではあり得ないと、
タカを括っているのか。

これから何度でも同じ問題に直面するのは、
火を見るより明らかではないか。

メディアによって伝えられる政府の対応は、
事柄の重大さを弁えず、
余りにも不誠実。

そもそも、わざわざビデオメッセージによって陛下のお言葉を
直接賜るまで、
お気持ちを拝察することも出来ず、いたずらに事態を
放置して来たのは、
政府の怠慢以外の何ものでもない。

この期に及んで、まだ陛下のお気持ちを蔑(ないがし)ろに
しようとするのか。

いずれにせよ、譲位を実現するには典範改正以外に「出口」
はない。

そのことは繰り返し確認しておく。