高森明勅

皇室祭祀のご負担

高森明勅

2016年12月8日 01:00

誰も言わないようだから指摘しておく。

皇室祭祀そのもの身体的なご負担は極めて大きい。

普通のご公務なんて比べものにならない。

まずご潔斎。

かかり湯だから、お若くご壮健でも、お風邪や肺炎に繋がり易い。

ましてご高齢の場合、お風邪も決して油断出来ない。

それからモーニングコートを召されて宮中三殿に向かわれる。

三殿と棟続きのお召し替え用の御殿でお手水の後、
古式のご装束をお召しになる。

このご装束自体、動きにくく、ご負担は小さくない。

更に天皇陛下のご拝礼は、一般の神社の神職が行う
(立ったまま、又は座ったままの)「
二拝二拍手一拝」とは違う。

格段に丁重。

「両段再拝」と呼ばれる。

「起拝」を二度繰り返すご拝礼だ。

起拝というのは、以下のような拝礼の仕方。

笏(しゃく)を右手に持ち、正座の姿勢からまず右足より立つ。

両足を揃えて、両手で笏頭(しゃくとう、笏の上の部分)を
目の高さまで上げたら、
今度は腰を折って深々と頭を下げながら、
左足からしゃがんで正座の姿勢に戻り、そのままうつ伏せになる。

これで一拝。

御玉串(おんたまぐし)の場合は、
両手で持たれながら起拝。

身体的にはより困難。

正座から立ち上がり、身体全体を
使って拝礼をして、
また正座に戻るという、
敬虔この上ないご作法だ。

その起拝を二度繰り返した後、深く頭を下げ、
更に再び起拝を二度繰り返す。

深く頭を下げられる作法を中に挟んで、前段と後段で2回ずつ、
起拝を4回行うのが両段再拝。

それを、例えば元旦の四方拝なら、まず伊勢神宮の方向に向かって
行われ、それから四方の神々を東→
南→西→北の順番で行われる。

つまり両段再拝(4回の起拝プラス1回深く頭を下げられる)を
5回行われる。

たった1度の祭祀でも、
そのご負担は人々が想像しているレベルを、
遥かに越える。

しかし、簡略にしたり、ご代拝を立てたり、中止したりするのは、
陛下のお気持ちに叶わない。

天皇という地位にとって、祭祀が神聖かつ重大なお務めであれば
あるほど、
ご自身が高齢による衰えの為、満足な形で行えないので
あれば、
それを果たせる後継者に委ねるべきだ、というのが陛下の
お考えだろう。

天皇が「存在」しながら、祭祀に十分、関われない―という姿が
常態化することを、
陛下が望んでおられるとは考えにくい。

神々(詳しくは皇祖・皇霊・天神地祇)への祭祀も丁重に
行われないで、「
国民の安寧と幸せ」だけ神々に「祈る」なんて
虫の良いことは、陛下には到底受け入れられないはずだ。

もっと言えば、ご自身は国民の為に何のお務めもなさらず、
神々に“だけ”「国民の安寧と幸せ」を依頼するというのも、
陛下の責任感にそぐわず、本末転倒だろう。

皇室祭祀を重んじるなら譲位制は欠かせない。