高森明勅

健全な庶民、愚劣な「識者」

高森明勅

2016年 11月 15日

いわゆる「識者」の意見より庶民の健全な感覚の方が
遥かに正しい場合が、
しばしばある。

さしずめご譲位を巡る有識者会議のヒアリングなんぞ、
その典型例か。

直近の産経新聞とFNNの合同世論調査(11月12日・13日実施)
では「
今後すべての天皇が譲位できるようにすべきだ」との回答が
70.
3%、
「今の天皇陛下に限り、ご譲位できるようにすべきだ」
が22.3%、
「譲位を認めるべきではない」5.3%。
という結果。

9割以上が“譲位を可能にすべし”としている。

これまでの各種世論調査の結果もほぼ同様。

陛下のお気持ちを何とか叶えて差し上げたい―
というのが圧倒的多数の国民の考え方だ。

ところが、ヒアリング対象者たちはどうか。

皇室典範を改正して譲位制を採用し
今後すべての天皇が譲位できるようにすべきだ」
という立場をはっきり表明したのは、これまでヒアリングを済ませた
11人中、岩井克己氏1人だけ。

特措法で「今の天皇陛下に限り…」というのも
保阪正康・所功・
石原信雄氏の3氏だけ。

他の7人は、「譲位を認めるべきではない」として、
天皇陛下が8月8日のお言葉で具体的に排除すべき
ご意向を明らか
にされた摂政の設置、国事行為の臨時代行、
ご公務の削減を「強制」せよと、
公然と主張している
(古川隆久氏は原則として譲位に反対だが、
国民の多くが望むなら
典範を改正して認める)。

政府が、わざわざ「反逆者」たちの意見発表会を開催している
ようなものだ。

但し、11月14日のヒアリングでも会議のメンバーからの質問には
興味
を惹くものがあった。

「(高齢の天皇に)終身在位を求めることは尊厳を損ねることに
ならないか」
渡部昇一氏への質問)

「天皇と摂政が併存する場合、『象徴』はどちらかという
問題は生じないか」(同)

「(陛下のお気持ちに従って)国民の多くが退位を求める場合は?」
笠原英彦氏への質問)

これらの質問のどれにも満足な答えはなされていない。