高森明勅

写真集『靖国の桜』

高森明勅

2017年 6月 18日

山岸伸氏の写真集『靖国の桜』(徳間書店)の見本本が届いた。

山岸氏は昨年の日本写真協会賞作家賞を受賞した写真家。

但し、風景写真家ではないという。
でも「桜には、なぜか心惹かれる」
と。
その山岸氏が、「誰も撮っていない桜を撮りたい」
という思いから、靖国神社の特別の許可を得て、
10年間、
開門前の夜明け前から朝日が昇るまでの時間帯に、
靖国神社境内の桜を撮り続けてこられた。

その集大成が、この度、
刊行の運びとなった『靖国の桜』。

俗な空気が流れ始める前の、
最も清らかな時間帯の靖国神社境内。

そこに浮かび上がる桜の様々な姿。

路上に散り敷く桜の花びらの美しさも、
見事に捉えられている。

素晴らしい写真と立派な造本。

写真集自体が、極めて完成度の高い
“作品”になっている。

出版事情の厳しい昨今、
よくぞかくも贅沢な写真集が世に現れたものだ。

私は、この写真集に文章を寄せる機会を与えられた。

題して「桜の宮」。

まことに光栄の至り。

私の他には、ケント・ギルバート氏と
靖国神社の徳川康久宮司の文章が収められている。

あれこれの政治的な文脈を離れ、
ひたすら「美」の観点から、
この写真集を手に取って欲しいと思う。