小林よしのり

ディストピアへ

小林よしのり

日々の出来事
2018年 5月 29日


「小説幻冬」の『おぼっちゃまくん』がやたら好評だが、

あれこそ文芸誌だから描けた作品。

一般漫画誌では描けない。

 

すぐ抗議してくる奴らがいるし、すぐ抗議に屈するし、

あらかじめ抗議が来ることを恐れて、自主規制し始める。

 

誰かが傷つくという条件は絶対的な威力を発揮する。

この世の中に誰も傷つく者がいてはいけないという異常な

イデオロギーが蔓延してしまっている。

 

「傷つくぞ!傷つくぞ!傷つけてはいけない!」

「足を踏まれた者の痛みが分からないだろう!」

 

この10年、20年で、表現規制はとことん強化された。

一般誌に描くことはストレスを溜め込むことになる。

『おぼっちゃまくん』は「小説幻冬」だからこそ、

わしの能力を十全に発揮して描けているのだ。

 

「セクハラ」やら「共謀罪」やら、今後も表現の枠を

縮小させていく流れは続くのだろう。

ディストピアへ、ディストピアへ、誰も傷つかない

ディストピアへ。