泉美木蘭

『ちょんの間』と言ったら怒られた・・・

泉美木蘭

2016年 4月 13日
ゴールデン街の火事にちなんで「ちょんの間」のことを書いたら
年配の人に、
「『ちょんの間』って言っちゃいけないんだぞ、そんなことブログに
公然と書いてたら、コメンテーターの仕事も来なくなるぞ」
と説教された。
えええ! そうなのお?

「半端者や朝鮮人に対する蔑称が入り混じっているからか?」
と聞いたら、そうだ、と。
でも、「ちょんの間」の『ちょん』は、
ちょっとの間=ちょいの間=ちょんの間
として受け取っていたけど。

そしたら、たとえ「ちょいの間」が語源だとしても、とにかく「ちょん」
という言葉が入っているから、万が一の問題になりそうな単語は
今は使ってはダメな時代なんだと言われた。

「指先で脇腹をちょんちょんつつく」と言っちゃいけないのか?
「ケーキの上にイチゴをちょんとのせる」と言ったら糾弾されるのか?
話を聞いているだけで、ものすごいストレスを感じてしまった。
じゃあどう書きゃよかったんだ。


『昔の、大人の店』?

ほのかなエロス香るけど、これじゃ、なんだかわからない。

『昔の、大人がちょいっと使う、お目こぼしの店』?

ちょっと後ろめたさのある場所という雰囲気が出た。
なんとなく伝わるけど、これでは「連れ込み」と勘違いされるし、
「昔の」とは言え、いまも残存していてたまに摘発されているしね。
もっと具体的な言葉に直していくと・・・

『短時間サービスを行う座敷型違法営業売春宿、いわゆる元赤線・青線』

これでは、ニュース番組だ。情緒もへったくれもない。
もう少しやわらかい文章に直すと・・・

『一階はあくまでもバーやスナックとして営業しており、
店先の女性と交渉することによって、二階の布団の敷かれた
座敷へ案内され、15分程度の短時間で大人の用を済ます店』

かな。でもこれじゃ、名称じゃなくて説明だし。
説明してしまったら、そういった場所に対する後ろめたさや、
照れくささといった感性・感覚が、表現できなくなっちゃうじゃないか。
会話のなかに登場する『ちょんの間』という単語には、そういった、
「みなまで言わないけどさ・・・」という、小声の、行間のニュアンスがあるんですよ。
はぁー。古典落語が封印される日も、そう遠くないかも・・・。