高森明勅

植樹祭と豊かな海づくり大会

高森明勅

皇室・皇統問題
2019年 10月 14日

平成の「三大行幸啓」の1つは「全国豊かな海づくり大会」。
始まったのは昭和56年だ。
当時は上皇陛下が皇太子としてお出ましだった。
ご即位後、天皇のご公務に格上げされて、ずっとご自身で式典に臨まれた。
全国植樹祭は言わば「山」を守るのが主眼。
ならば「海」を守る豊かな海づくり大会も、天皇のご公務に格上げして
こそ均衡が取れる。
そのようにお考えになったのだろうか。

日本神話の「海さち・山さち」の物語にも示されているように、
日本人にとって海は、山と共に極めて重大な意味を持った。
同大会への天皇のお出ましは、その事実を国民に改めて気付かせてくれる。
天皇陛下は、初めてお出ましになった今年の大会(9月8日、秋田県)の
「おことば」で、以下のようにお述べになった。

「四方を海に囲まれた我が国は、古くから海の恵みを受けてきました。
また、山や森から河川や湖を経て海に至る自然環境と、そこで育まれる生命と文化は、
私たちに様々な恩恵をもたらしてくれます。
私自身、以前に鳥海山に登った折に、鳥海山の雪解け水がブナ林を養い育て、
伏流水となって山麓の田畑を潤し、やがて日本海に注いで良質なイワガキを
育んでいると聞き、山と海、そして人間との大切なつながりを感じたことを
思い出します。
このような豊かな海の環境を保全するとともに、水産資源を保護・管理し、
海の恵みと美しさを次世代に引き継いでいくことは、私たちに課せられた
大切な使命であると考えます」と。

海と山は決して切り離されたものではない。
上皇陛下が豊かな海づくり大会を、植樹祭と同格の天皇のご公務へと
格上げされた、その背景にあるご洞察へのオマージュのようにも受け取れる。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/