高森明勅

同盟と独立

高森明勅

政治・経済
2019年 7月 15日

アメリカ国民にとって同盟国のトップクラスに位置付けられるのは、隣国のカナダ。
同国は強大国アメリカと国境を接して、常にその風圧に晒されている。
にも拘らず、結構、したたかに付き合っている側面がある。

例えばイラク戦争。
アメリカは当然、カナダにも派兵するよう圧力をかけた。
アフガニスタン紛争ではカナダも派兵していた。
旧宗主のイギリスもイラクに派兵している(カナダは今も英連邦王国の1つ)。
だから、カナダとしては断りづらい局面だった。
それでもカナダは毅然と派兵を拒否している。
そのロジックは以下の通り。

「我々がアフガニスタン紛争で派兵したのは国連安保理の決議があったからだ。
しかし、イラク派兵にはその前提条件が欠けている。
アメリカが勝手に始めた戦争だから、我が国は関与しない。
もし、どうしてもカナダに派兵させたいなら、安保理で決議すれば良い」と。

この正論を押し通し、結局、イラク派兵は行わなかった。
アメリカはカナダ大使を呼びつけて脅し上げるなど、
かなり嫌がらせをしたらしい。
それでも屈しなかった。
更にレーガン大統領の時代に、対ソ連用のミサイル基地を
カナダ国内に造ろうとした事があった。
カナダからなら、北極を越えればすぐにソ連の首都モスクワなので、
軍事的には最適だった。

しかし、これもカナダは拒絶した。
カナダにミサイル基地を造れば、ソ連の喉元にナイフを突き付けるに等しい。
そんな事をすれば、ソ連がアメリカの裏庭であるキューバにミサイル基地を
造ろうとして、アメリカと全面核戦争に突入する一歩手前まで緊張が高まった、
「キューバ危機」の二の舞になる。
だから、カナダは断固拒否した。
アメリカもやむなくそれを認めざるを得なかった。
カナダは、アメリカに比べて人口も経済力も約10分の1、
軍事力も正規軍が約6万2,000人程度。
日本と比べてもハッキリ見劣りする。
しかし、独立国として筋は通している。
それでいて、アメリカ国内では同盟国として最も高く評価されている
(日本より遥かに高い)。

勿論、その背景には様々な事情があるだろう。
それでも、独立国として筋を通そうとするカナダの姿勢は、
日本も見習うべき部分があるのではないか。

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