高森明勅

雲間よりさしたる光に

高森明勅

皇室・皇統問題
2019年 11月 12日

11月10日の「祝賀御列の儀」。
天候に恵まれ、最高のパレードになった。
可能なら私も沿道で両陛下のご車列をお迎えしたかった。
スタジオで番組中、私の頭の中に繰り返し2首の和歌が響いていた。
今年の歌会始での両陛下の御作だ。
お題は「光」。

天皇陛下は次の御製(ぎょせい)をお詠(よ)みになった。

雲間より
さしたる光に
導かれ
われ登りゆく
金峰(きんぷ)の峰に

金峰山は山梨県と長野県の県境にあり、標高2,595メートル。
「その山容の秀麗高雅な点では、秩父山群の王者である」(深田久弥氏)とされる。
この御製では皇位を象徴していると理解できる。
ご即位への決然たるご覚悟が窺える。
しかも、その金峰山の遥かな高みの雲間から一条の光が差している。
非常にスケールの大きな歌柄であり、「光に導かれ」とあるのは、
陛下の謙虚さのご発露に他ならないだろう。


皇后陛下の御歌(みうた)は以下の通り。

大君と
母宮の愛(め)でし
御園生(みそのう)の
白樺冴(さ)ゆる
朝の光に

明るく清々(すがすが)しい。
先ず、上皇陛下(当時の天皇陛下)をごく自然に「大君」とお詠みになっている
(「父宮」でなく)。
赤坂御所の白樺は、上皇陛下と上皇后陛下が出会われた軽井沢にちなむ。
さらに上皇后陛下の“お印(しるし)”にもなっている。
この御歌には上皇・上皇后両陛下への深い感謝のお気持ちが込められている。
それを、朝の光にくっきりと浮かび上がる白樺に託して、詠まれた。
迷いを振り切って凛とされた、皇后陛下の潔いご態度が伝わる。

ちなみに、今年のお題の「光」は平成で二回目。
これは異例だ。
明らかに、上皇陛下が次の時代を祝福するお気持ちから、
特にこのお題を選ばれたと考えるのが自然だ。
11月10日はまさに「光」溢れるパレードになった。
沿道でお迎えする人々の表情も皆、晴れやかだった。

「君が 笑えば 世界は 輝く…ごらんよ 光は 君と ともにいる」

【高森明勅公式サイト】
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