高森明勅

驚くべき発言

高森明勅

皇室・皇統問題
2020年 6月 21日

女性議員飛躍の会の「皇位の安定継承」を巡る勉強会。
驚くような発言もみられる。
例えば次のような…。
「『皇統』とはイコール『男系(父系)』であり、『女系(母系)』などというのは、こと皇統については、歴史上、何の実態もない現代人の“妄想”にすぎません。『それでも今後は女系でいく』というのであれば、まずは『皇位継承資格者から男性はすべて排除する』という『法律』を、新たに制定しなければならなくなるでしょう。そこまでしなければ『女系』は、はじまりません」(松浦光修氏)唖然、呆然。
言うべき言葉を失ってしまう。
「皇統イコール男系」なら、皇室典範に「皇統に属する男系」(第1条)と、
わざわざ“二段構え”で規定している理由が説明できない。
「皇統」には男系も女系も“属し得る”ことを前提に、法的な規範として
一先ず「男系」に限定している、という組み立てだ。
歴史上も、大宝令・養老令に「女帝の子」は、父親の皇族の血筋(男系)
ではなく、天皇であられる母親の血筋(女系)で「親王(内親王)」
とする条文があった(継嗣令・皇兄弟子条)。

この場合、もし男系なら、普通に“皇族の子”なので、
同令の規定では「王(女王)」でなければならないはずだった。

「それでも今後は女系でいく」って、この論者の「妄想」以外に、
誰かそのような主張をされている人が、世の中にいるのだろうか。
側室不在、非嫡出の継承否認という、全く前例の無い“窮屈な”
継承条件の下では、男性・女性、男系・女系のいずれかに
限定していては、皇位の安定継承はとても望めない。

それが、「男系男子」限定を“見直す”という提案の、
そもそもの出発点(!)だ。
だから、「女系(だけで)いく」などというのは、自己矛盾だし、
男系限定と“同じく”早晩行き詰まるのが目に見えている。
勇ましく批判されている相手が、ご自身の「妄想」ではちょっぴり残念。

「『法律』を、新たに制定」とおっしゃるが、
皇位継承の在り方については「皇室典範」で定めるべきことが、
他ならぬ憲法に規定されている(第2条)。
だから、もし「女系女子」限定(?)の「法律」を「新たに制定」しても、
それは憲法違反なので無効。
だから「『女系』は、はじまりません(!)」。
メデタシ、メデタシ(…なのか?)。

この論者は、他にもビックリするような発言を連発しておられる。
国会議員の勉強会でこのような水準の話がなされた事実に、
意外の感を抱く。
私もそうした勉強会に講師として招かれたかと思うと、
少し恥ずかしくなった。

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