高森明勅

『神武天皇論』刊行 

高森明勅

皇室・皇統問題
2020年 6月 8日

先頃、橿原(かしはら)神宮庁が清水潔氏監修『神武天皇論』と
田浦雅徳氏監修『橿原神宮史 続編』を刊行。
その2冊を発売元の国書刊行会からご恵送戴いた。
前者は、学術的な立場から「神武天皇」を扱った近来、殆ど類書を見ない
貴重な出版と言えよう。

私の手元には、日本文化研究会編『神武天皇紀元論』(昭和33年)、
中山久四郎編『神武天皇と日本の歴史』(昭和36年)、
平田俊春『日本の建国と二月十一日』(昭和42年)、
神社新報社編『神武天皇論 宮崎神宮史』(昭和59年)などの
著書がある。

本書はこれらの業績を受け継ぐ堅実な良書だろう。
清水潔氏の手になる「序論」(42ページ)は力作。
この論文だけでも優に一冊分の値打ちがある。
個人的には遠藤慶太氏の「神武天皇の末孫として―近世の神武天皇」
(第4章)が特に興味深かった。

又、清水節氏「『紀元節』の廃止と『建国記念の日』の制定」(第7章)
で改めて取り上げられた、「建国記念の日」を他でもない“2月11日”に
決定するに当たり、古代史学者の田中卓博士が果たされた絶大な
学問的貢献は、広く知られるべき事実だろう。

後者は『橿原神宮史』(全3巻)の続編で、
昭和18年から令和2年迄を取り上げる。
これらの刊行物は橿原神宮ご創建130年を記念したものだ。

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