高森明勅

残念な野党議員の「先延ばし」論

高森明勅

皇室・皇統問題
2020年 12月 18日

どうやら先日の緊急シンポジウムは、私らの予想以上の成果を、
早々ともたらしたようだ。
その時、ご多忙の中をわざわざご参加戴いた国会議員の皆様には、
深く感謝申し上げる。

その中でも、最も熱心にご参加下さったお1人が
立憲民主党所属の某衆院議員。その熱意には敬意を表したい。
但し、残念ながらその考え方には同意し難い。

同議員は、差し当たり皇位継承資格について、「男系」限定の
“縛り”を維持したままで、女性にまで拡大するだけにとどめる、
というお考えのようだ(女性宮家も“一代限り”)。

「男系でなければならないとも思わないし、絶対に女系が
駄目だとも考えていない。
だが、敬宮(としのみや、愛子内親王)殿下のお子様の世代の問題を今、
敢えて解決する必要があるのか」というご意見。

つまり、やがて行き詰まることがハッキリしている「男系」限定の縛りも、
それに固執する人々がいる“当面の間”は、手を着けないでソッとしておこう、と。
とても分かりやすい「先延ばし論」だ。

しかし、男系限定を“維持したまま”の小手先だけの制度改正では、
率直に言って皇位の安定継承には何ら寄与しない。
いくら女性宮家があっても、そのお子様方は(女系だから)誰も
皇位継承資格をお持ちではないので。
にも拘(かかわ)らず、そのほとんど無効な方策の為に、
内親王方にご結婚後も、国民としての自由も権利も断念して戴いて、
女性宮家を立て、皇室に残って戴く。
というのは、余りにも残酷で、身勝手な話ではないか。
内親王方ご自身の“人生が懸かっている”という、厳粛な事実を
見逃してはならない。

「一代限り」の女性宮家のご婚姻でも、皇室会議の同意は不可欠だろう。
その場合、配偶者は皇族の身分を取得できるのか、どうか。
しかし、皇族と国民で1つの世帯を営むというのは、明らかに不自然だろう。
配偶者に皇籍が与えられるなら、皇族同士の間に生まれたお子様が、
皇族の身分を持たないのも奇妙だ。

もしお子様が皇族になられるなら、皇族なのに、男女を問わず
皇位の継承資格が“無い”ということも、ツジツマが合わない。
男系限定の縛りを見直さないつもりなら、男系女性に継承資格を
認めてもさしたる意味は無く、女性宮家も立てるべきではあるまい。

今の皇室典範の各条文の趣旨を明らかにする為に法制局
(当時、内閣法制局の前身)がまとめた「皇室典範案に関する想定問答」には、
以下のようにあった。

「女系を認めないとすれば…他に男子の皇位継承者がいなくて女帝を認めることは、
天皇制を一世だけ延命させるだけのことにすぎない」と。
その通りだろう。

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