高森明勅

皇位の安定継承でなく目先の皇族数の減少対策で誤魔化す

高森明勅

皇室・皇統問題
2021年 7月 1日

共同通信が次のような記事を配信した(6月30日21時21分)。
「安定的な皇位継承策を議論する有識者会議(座長・清家篤)は
30日の第8回会合で、皇族数の減少対策として、
『女性宮家』創設など女性皇族が結婚後も皇族の身分を
維持すること、旧宮家(旧皇族)の男系男子が皇族となることの
2案に絞り込み、議論していくことを確認した。
有識者会議はこの方針に基づき、菅義偉首相への答申をまとめる方針だ。
政府は答申を踏まえ、秋までに議論の結果を国会に報告する。
清家氏は記者団に『秋篠宮さまの長男悠仁さまの長男の世代で、
十分な皇族数が皇室にいていただく必要がある』と説明した」

《一代限りの女性宮家案に逃げ込む?》

同会合の前日、私はさる打ち合わせの場で、
今回の有識者会議の「答申」を巡り、以下のような見通しを示しておいた。

「一代限りの女性宮家案」と「旧宮家案」を軸にした内容になる気配が濃厚。
しかし後者は、(男系限定維持派への政治的配慮から)答申に
盛り込まれたとしても、憲法が禁じる「門地による差別」に当たり、
“国民平等の原則”に違反する疑いが既に指摘されている。

なので、他のテーマならともかく、皇室について憲法に違反する
虞れがあるような方策は、(政府が発狂でもしない限り)結局、
国会への「報告」から除外するしかないはずだ。
その一方、女性宮家も“一代限り”であれば、附帯決議が求めた
「安定的な皇位継承を確保する」ことには繋がらない。
目先だけの「皇族数の減少対策」でしかない。
それはまさに、国会が全会一致で議決した附帯決議への、
裏切り以外の何物でもない。

《国会の総意による決定》

そもそもこの問題は、政府の一諮問機関に過ぎない
有識者会議の答申ごときで結論が決まるような、
軽々しいものではない。
ご譲位を可能にした法整備の際に、国会の全政党・会派が一堂に会して
合意を形成したのと同じような、(或いはそれ以上に)丁寧な手順を踏んで、
国会の総意によってこそ、決せられるべきだ
(その前に皇室のご内意を拝すべきことは勿論)。

従って、国民の代表機関である国会の良識によって、
政府の姑息な誤魔化しと問題解決の事実上の“先延ばし”を、
しっかり押し戻して貰う必要がある、と。

共同通信の報道を見ると、有識者会議での議論のとりまとめは、
残念ながら私の見込み通りの展開になりそうだ。
しかし、最悪、そうした展開になった場合でも、諦める訳にはいかない。
国会がどれだけ本来の筋を通すことが出来るか。
その国会を国民がどれだけ後押しすることが出来るか。
皇位の安定継承を目指す取り組みは、いよいよ正念場が近づいている。

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