高森明勅

天皇の「リアル」

高森明勅

2011年 6月 28日

原発を巡り、推進派と反対派の不毛な対立が繰り返されて来た。

反対派が「絶対安全か?」と追及すれば、推進派は「絶対安全だ!」と答える。

それに反対派が「嘘だ」と突っ込めば、推進派は「嘘じゃない」と反撃する。

あとはエンドレスに同じ応酬の反復。

何と馬鹿馬鹿しいやり取りか。

この世に「絶対安全」なんてあり得ないことは、自明だろう。

だから、推進派の言い分は勿論、嘘だ。それは、今回の震災を待つまでもなく明らか。。

だが、元々あり得ない「絶対安全」を振り回す反対派も、一人前の大人の責任ある議論の仕方とは、とても思えない。

天皇を巡る対立も、似たようなところはなかっただろうか。

天皇擁護派も反対派も、自分たちに都合のいいところだけを勝手に取り上げて、議論して来たのではあるまいか。

あたかも天皇という存在が、「絶対」の善か悪であるかのように。

そこでは、原発を巡る空虚な対立がエネルギー問題の「リアル」を見えにくくして来たように、天皇の「リアル」が抜け落ちてしまっていたのではないか。