高森明勅

やっぱりトンデモ「Y染色体」

高森明勅

2011年 2月 2日

未だに「Y染色体」論にしがみつこうとしている人がいるようだ。

何だか気の毒になってくる。

でも他に男系限定の説得力のある根拠も見当たらないので仕方がないのか。

この仮説が現時点で科学的に否定されているのなら論外。

そうでなくても、科学的命題は必ず反証可能性を孕む。

それが科学の「宿命」だ。

50年、100年後も維持されている保証はどこにあるのか。

そのようなものを皇統を巡る議論に持ち込むこと自体、筋違いと言う他ない。

更に、もし「神武天皇のY染色体」なるものを持つことが皇位継承の条件なら、

過去10代(8方)の女帝は当然、

「Y染色体」を持たないから、資格もない人物が不当に天皇になったと主張しなければならない。

そうすると、これまでの125代の中、10代は正当な継承でなかったとして、除外すべきことになる。

また逆に、桓武天皇からわかれた平氏の平将門や清盛、北条義時、清和天皇からわかれた源氏の源頼朝、足利尊氏なども皆、

神武天皇のY染色体」を受け継いでいるはずだから天皇になる資格があったことになる。

推古天皇をはじめとする歴史上の女帝の皇位継承の正当性を否定し、一方
で足利尊氏らに天皇になる資格を認めるのが「Y染色体」論だ。

これがトンデモでなければ一体、何と言えばいいのか。