高森明勅

白鵬の敗因

高森明勅

2010年 11月 19日

破竹の勢いで連勝を続けていた横綱の白鵬が負けた。

63連勝でストップ。

史上2位だった江戸時代の谷風に並んだものの、双葉山の69連勝には及ばなかった。

その報に接した時、即座に「勝ちに行ったな」と思った。

それが敗因だろう、と。

と言うのも、白鵬自身が勝利の秘訣を問われて「勝つ相撲をとらないこと」と答えていたからだ。

「決して無理をしない。結果を求めないということなんです。…そういう風に自分に言い聞かせないと、やってやれないんだよね。固くなっちゃうから」と。

案の定、後のインタビューで「勝ちに行ってしまった」と答えていた。

でも、すぐそのように反省できるところが、やっぱり凄い。

例の天皇賜杯なき優勝で涙を流した件について、白鵬はこう語っていた。

「天皇賜杯をなくすとかさ、相撲が国技でなくなっちゃいますよね。

天皇陛下はこの国のシンボルであり、一番のトップ。

なくてはならないお方だと思います。

国技というのは、文化と伝統そのものでしょう。

…天皇賜杯を抱いて終わる。

それが相撲ってことじゃないですか。

相撲がなくなれば、この国は終わると思ってるから」

これだけの覚悟を持った力士が現在、他にどれくらいいるか。

白鵬には今回の負けをバネに更に成長し、今度こそ双葉山の記録を塗り替えて欲しい。

なお白鵬が敗れた15日は、ちょうどモンゴルのエルベグドルジ大統領が来日していた。

大統領は、自分の来日で白鵬が勝利に拘ってしまったのではないか、と気遣ったようだ。

これもいい話ではないか。