高森明勅

「父の日」は実在するか

高森明勅

2010年 6月 21日

「母の日」は間違いなく実在する。これは断言できる。

昭和6年、香淳皇后のお誕生日(地久節)の3月6日を「母の日」として祝うことに決めた。

戦後はアメリカに倣って5月の第2日曜日にカーネーションを贈ったりするようになった。

そんなことより、5月のこの日には、愚妻のもとに3人の子供たちから感謝のメッセージやプレゼントが殺到する。

だからその実在は疑う余地がない。

しかるに6月の第3日曜日はどうか。

世のお父さんたちが今年のこの日をどう過ごされたかは知らない。

だが、少なくともこの私には、何の変哲もない普通の日曜日でしかなかったではないか。

デパートや商店街などは「父の日」フェアだの何だのと売り込みに躍起だが、そんなものに騙されてやすやすと「父の日」の実在を信じるような私ではない。

…と疑心暗鬼になっていたら日付が変わる2分前、夜中の12時58分に横浜に住む娘から不在着信が入っていた。

いやいやぬか喜びは禁物だ。

都内に住む長男とスカイプで話した時も「父の日」の話題なんて片鱗も出なかった。

まったく別件の電話の可能性も十分ある。

用心しなくては。

しかし、こっちから電話するのも妙だし。

と躊躇っていると

翌日、長男からメールが。

「昨日は『父の日』」とのタイトル。

まさに出し遅れの証文。

中身は「昨日は『父の日』だったので改めて居酒屋でドーンと祝いましょう」だって。

その飲み代は俺に払わせるつもりに違いない。

改めて問う!「父の日」は実在するのか?!

ーそれにしても気づいてる人もいるでしょうが5月5日の「こどもの日」の法律上の趣旨は「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」。

5月には祝日としてもうひとつ「母の日」があったのである。

でも、子供を重んじ、母に感謝しながら、父だけは完全にスルーってのも何だか…