高森明勅

宮崎駿氏の「勤勉」

高森明勅

2014年 11月 10日

長年、アニメ映画を手掛けてこられた宮崎駿監督が
「アカデミー名誉賞」
を受賞。

日本人では黒澤明監督以来、2人目という。

快挙だろう。このニュースに触れて、
私が真っ先に思い浮かべたのは、彼の「
勤勉さ」。

と言うのも以前、
脳学者の池谷裕二氏とコピーライターの糸井重里氏の対談
初出は平成14年)の一節を読んで、
余りにも強烈な印象を受けていたからだ。

糸井氏いわく、
あるクリエイターの仕事話を聞いたことがあって、たまげたんです。
そのクリエイターは、朝の9時に仕事場に来て、
そのまま黙って仕事をして、朝の4時に帰宅するんだそうです。

毎日。

(略)2食ぶんのお弁当を持ってきていて、
食事には15分しかかけないそうです。
昼に半分食べて、お腹(
なか)が空(す)いたらもう半分食べる。
あとはひたすら仕事をしているんだって。
しかもその人は仕事をやりはじめてから24年間、
風邪はもちろん、あらゆる病気にかかったことがない…。

(略)お正月は1月2日からふつうに仕事場に来ていて、
社員が風邪をひくと怒るんだそうです。

(略)手際のよさや整理のうまさなんかじゃなくて、
9時から4時まで仕事をせざるをえないぐらいの
強烈な動機の塊(かたまり)』みたいなものが、
トップクリエイターの根っこにあるチカラなのかなぁ、
と思うんです。

やりすぎてしまった人が、天才なのだというか。

略)隠していてもしょうがないから言ってしまうと、
そのクリエイターって、実は宮崎駿さんなんです」
(『海馬 
脳は疲れない』新潮文庫)

― 宮崎駿監督最後の長編アニメにして、
個人的には最高傑作かもと思っている「風立ちぬ」の主人公、
堀越二郎のモデルって、実在の堀越以上に、
宮崎駿自身ではないだろうか。